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第21話 神話から見る歴史

今日のリン先生の授業も神話から見る歴史でした。お話は『欲しがりな王様』


ある所に、とても欲しがりな王様がいました。めずらしい物があると聞けば欲しがり、人の物を見ては欲しがる始末。ですが欲しがりな所以外は優秀な王様でしたので、王様が欲しいと言えば皆が進んで従っていました。


ある時のことです。王様はとある国の国宝が欲しくてたまらなくなりました。王様はあの手この手で国宝をてにいれようとしますがモノは国宝。色よい返事が貰えるはずもありません。

悔しがる王様にそっと囁くものがありました。突然現れた黒いローブ姿の男です。


「陛下、いい考えがございます。この世界をすべて陛下の支配下に置けば良いのです。さすれば皆が進んで陛下に全てを差し出すでしょう」


と。王様は、その考えがいたく気に入りました。この世界の全部が手に入ればそれはどんなに素晴らしい事でしょう。王様は、欲しがりな所以外優秀な王様でしたので、すぐに国民を説得しにかかりました。

自分がこの世界の頂点に立てば我が民は一番豊かで一番優秀な民になるのだと。

最初は半信半疑で聞いていた国民も王様の熱弁に次第に取り込まれ狂ったようにその意見に賛同するようになりました。


そして戦争がはじまったのです。


王様は欲しがりな所以外は大変優秀でしたのであっというまに国々の半分を自国の支配下に置きました。

驚いたのは他の国々。慌てて恭順するもの他国と共同して戦の準備をするもの様々です。

王様の快進撃は続き、世界統一まであともう一歩のところまで来た頃です。晴れ渡った空に一筋の光がはしりました。その光は大音量とともに戦の指揮を執っていた王様を撃つとその場に沈黙をもたらしました。


何故なら光は雷で王様は黒焦げになって死んでいたからです。その場にいた者は慄きました。これが神々のなせる技だとすぐに気付いたからです。あるものは自分も打たれるものと思い空を恐る恐る見上げました。またあるものは跪き神々に許しを請うたのです。

天は沈黙を守りましたが、王様の軍隊は雲の子を散らすように逃げてゆきました。そして、皆が知ったのです。他国の益を損なう戦争を、神々はお赦しにならないのだと。


という神話が細部は違えど12カ国分あるらしい。細部って言うのはそそのかした黒いローブの男がジャルヴァナータであったとか、旅の吟遊詩人だったとか。後は死に方が、神が姿を現し打ちすえたとか、神々によって召喚された異世界の民に殺されたのだとか。

なんで各国にこの神話があるかは不明。神話を研究する人達によるとつくられた神話である可能性もあるそう。ちなみに神話が発生した時期も不明だそうで。


そんな感じでリン先生の授業は終り。やっておいた宿題は大変褒められたものの、手が震えて使い物にならなくなるという話をするとちょっと苦笑されました。なので今回は書きとりの量を減らして貰う事に。おかげで宿題が早く終わり午後の時間に余裕ができたのでミーシャさんと庭へ散歩に出かけたときの事………。


「………あれって隠れてるつもりだよね?」


「そうですねぇ」


私と同じく困ったようにミーシャさんが首をかしげる。

視線を感じて見てみればエヴァンジェリンちゃんが木の陰に隠れた所。

正直ドレスが全く隠れきってない所が可愛らしい。しかしさっきからこの繰り返しなんだよねぇ………。私が気になってるのか何か言いたい事があるのかさっぱりです。

お嬢さん、この前の勢いは何処に置いてきましたか。


「しょうがない」


私はそう呟くとツカツカとエヴァンジェリンちゃんのいる木の陰へ。


「何か御用かな?」


ビクリとドレスと薄桃色の尻尾が動く。これでバレてないと本当に思っていたらしい。木の陰を覗きこめばエヴァンジェリンちゃんが真っ赤になって俯きながらモジモジしているのが目に入った。

これはちょっと………カワイイ。この前と同じ子とは思えない。


「エヴァンジェリンちゃん………どうしたの?」


「別に………たまたまここにいただけであなたに用なんてっ! そのっ!!」


これはアレかツンデレってやつか? チラチラこちらを見ながら言う様は、この前の時みたいな嫌悪感とか怒りみたいなものはなく、ただ、ただ気まずくて言い出しにくいって感じが初々しい。


「私に会いに来てくれたんじゃないの?」


優しく聞けばドレスの裾をきゅっと握って固まってしまいました。


「私………私は………その………」


「うん」


「私………あの………この前は言い過ぎたと思って………その」


「もしかして謝りに来てくれたの?」


その言葉に真っ赤になってまた俯く。


「レディーの話は最後まで黙って聞くものです!!!」


「えと、ごめんね?」


そう言うと、別に謝って欲しかったわけでは………と口ごもる。


「私………考えましたの。その………あなたのこと知らないのにって言葉………それで………」


エヴァンジェリンちゃんが意を決して何か言おうとした時だった。


「エヴァンジェリン!! こんな所で何をしているのですか?」


「あ………イリアナお姉様………」


やってきた女性の言葉にエヴァンジェリンちゃんの顔がサツと曇る。やってきた女性はディーさんと同じ銀色の毛並みで釣り目の美人さん。彼女は私を見ると少し頭を下げてこちらに会釈した。

彼女がイリアナさん………。エヴァンジェリンちゃんがディーさんに似合うと言った人。


「妃殿下にはご機嫌麗しく。………妹が何か失礼をいたしましたでしょうか?」


「いいえ、私達はただお話をしていただけです。失礼な事なんて何もありません」


そう言うと安心しましたと笑みを浮かべる。


「そうですか。失礼致しました。エヴェンジェリン、妃殿下はお忙しい方です。行きますよ。妃殿下、ミーシャお姉様、失礼致します」


「はい………お姉様」


そう言ってちらりと私の方を見るとエヴァンジェリンちゃんはイリアナさんの方に行く。その姿は心なしか寂しげだった。


こんな時、女の勘て煩わしい。


イリアナさんはとても丁寧に対応してくれたのに、笑っていたのに………心が冷める思いがした。

だって目の奥が全然笑ってなかったんだもん。

彼女はディーさんが好きなのだ。これは確信。

だから、エヴァンジェリンちゃんが怒りにきた理由もきっと彼女。

おそらくはエヴァンジェリンちゃんに私の悪口を言ったのも………彼女だ。

自分でもおかしいとは思ったけど不思議とその確信があった。

ミーシャさんと顔を見合わせてから慌ただしく去っていく二人を見て、私は心は何とも言えない不安が沸き起こるのを感じた。

私用が重なり更新できませんでした。見に来て下さった方、申し訳ありません(汗)

深音に恋(?)のライバル登場です。

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