第18話 ストーカーより性質が悪い
リン先生の話はちと怖かったです。だって『血の中に神々の御力が宿って見ているからです』ってなんだ!!! ストーカーより性質が悪い。
ていうか、私の世界の方の神様と違うんだよね??? 私の身体には血は入ってないんじゃあと思ったんだけど、誓約と言う鎖がある事を思い出しました。一応ディーさんと結婚している手前、やっぱり神様がその部分を見逃してくれる訳ないよね~☆みたいな。
なので、危険信号がでたら速やかにそのミッションから一時退避します。何で一時かって?別の方向からのアプローチだったらセーフってことも………ないかな???
そんな事を思いつつ今日のリン先生の授業は終り、午後はミーシャ先生と『幼稚園からの、あいうえお』という………ちょっと精神的にダメージが続きますが、どうよ………な代物が。
あれ? 少学生からのじゃなかったっけ?? と言うのも含めてお勉強。少学生の物もちゃんとありました。絵が多いのとミーシャさんの説明がいいのか大変分かりやすいです。漢字こそはないものの、ここの国の言葉は『幼稚園からの、あいうえお』からもわかる通り、アイウエオ表記らしい。助かった。
まぁ、単語と文章は難しいだろうし私にとっては課題が多いけど。今日は主にアイウエオのお勉強。教えて貰いながらひたすら書きとり! 書きとり!! 書きとり!!! なんて懐かしくも闘魂溢れる勉強法☆脳だけじゃなく身体で覚えるがいい!!! って感じ。一応、最後の『ん』まで書きとった頃には精魂着き果ててました。こんなことぐらいって思うなよ? 何回書いたと思ってんの。数えてないから分かんないですが。右手がプルプルします。ケータイとパソコン生活舐めるな
。書きとり機能なんてもう随分前から退化してる(泣)しかし先生としてのミーシャさんは容赦なかった………。下手な事では逆らうまい。
さて、今は夜。夕飯中です。
「………ミオン手伝ってやろうか………?」
そう言ってくれたのはディーさん。しかし私は首を振って己の意志を伝える。
「大丈夫だよディーさん。私頑張る」
「む………? そうか??」
哀れに見守るディーさんの視線の先、私の右手はプルプルと震えカチカチとナイフと皿が不協和音を奏でてる。マナー? そんなものここにはない。ここは戦場だ。私がご飯を食べるための!!!
「ミオン様、お切りしますからお貸し下さい」
見かねたミーシャさんも心配そうに言ってくれる。
「そうだぞ、ミオン。先程から全然食べれてないだろう。何なら俺が………」
「食べさせて貰うのは却下です。うぅ。悔しいけど、ミーシャさんお願いします」
ディーさんが哀愁背負った虎さんになりました。でも嫌なものは嫌です。
今日はピピルルという魚の香草焼き。さっきから美味しいにおいがしててお腹を刺激するんだけど全く口にいれられなかったんだよね。ナイフで切れなくて。柔らかい魚なら左手で握ったフォークで退治してやろうと思ったんだけど………なかなか身のしっかりなさったお魚さんで………。で今に至ると。
私は、ミーシャさんがナイフで一口サイズに切ってくれるのをワクワクしながら待っている。ここの料理って美味しいんだよね~☆そろそろ真面目に身体を動かす事も考えないと絶対太るっていう確信がある。後一度、やっぱり調理場に行ってみたいなぁ………こんな素敵な料理をつくってくれる人の顔がみたい。
「さぁ、終わりましたよ。ミオン様。冷めないうちに召し上がって下さいね」
「わあい!!ミーシャさんありがとう!!!」
左手でブスリと刺しては口に運ぶ。おいしーい☆☆☆☆☆噛みごたえはあるけど堅過ぎず、お魚だし、もっと淡泊なのを想像してたんだけど、香草の効果だけじゃなく身に甘味がある。何だろう………
歯ごたえアワビ、味は甘エビ? ちょっと違う気がするけど、香草とバターでかなり美味しく仕上がってます。し・あ・わ・せ。
プルプル震える右手は使い物にならないので左手ですべての食事をする。ちょっと食べずらいけど我慢我慢。あー、そのうちテーブルマナーも学ばないと。
ちなみに食後のデザートはアイスでした。今日も美味しかったです。御馳走様。
食後のミーシャさんのお茶がまた一段とおいしいですよ。
「そう言えばミオン。今日の授業はどうだったんだ?」
「あー、色々ショウゲキデシタ。この世界ができるまでの神話のお話………ちょっと怖かったよ………。」
「あぁ。誰もが一度は通る道だ。幼い子向けの話でも泣く子がいるからな」
「そうなんだぁ………」
私が怖いと思ったのは間違いじゃないらしい。
「ミオンにとっては不自然極まりない事もあるだろうが我々は呼吸をするのと同じようにその誓約によって生かされている。恩恵もあるし納得せざるおえないというところだな。その辺を気にしなければ神々は意外と大雑把な所も多い。誓約以外は神々の気分次第。ようは気に入られるか気に入られないか程度のものだ」
んなアバウトな。そんなんでいいのか神様。なんか、特殊な力を持っただけの子供みたい。
でもそれだと何処が神様の地雷だかわかんないんだよなぁ。
「勉強しながら、ディーさんの呪いを解く方法を探そうと思ったけど、色々制約がありそうな事もわかったよ」
「そうだな。神々の御心は我等には分からん。何が逆鱗に触れるか分かれば楽なんだが。………リンにも言われたと思うがミオン。神々の怒りの予兆があった時は………お願いだから調べるのを辞めてくれ」
「分かってる。仮にも結婚の誓約したお妃さまがいなくなっちゃったら大変だもんね」
はぁ、と溜息を吐くと真剣な顔をしたディーさんが私の手を握ってこっちを見据える。
「勘違いするな。そんな事はどうでもいい」
「う………」
真剣な表情にちょっと逃げ腰になる私。そんな私の肩にミーシャさんが優しく手を置いた。
「今のはミオン様がお悪いです。陛下は、私達は、ミオン様を心配してるんですよ?」
ミーシャさんの言葉にディーさんが力強く頷く。
「俺が心配してるのは王妃の身じゃない。大事なのはミオンの身だ。わかってくれるな?」
じっと見つめてくる瞳には照れくさそうな顔の私が映ってる。
「うぅ………はい………ごめんなさい………」
そう言うと安心したように微笑まれました。
天然ディーさん御降臨です。なんだかとっても恥ずかしい………けど、とても嬉しい言葉だった。