第16話 目くじら立てて怒るような事じゃない
青い顔した女官さんと、エヴァンジェリンちゃんが帰ってから、本当に申し訳ありません、とミーシャさん。あの子はミーシャさんの従姉妹だそう。そして、ディーさんとも従兄妹なんだって。
従兄妹とは言っても王族ではないらしいけど。じゃあ、ミーシャさんもディーさんの従兄妹なのかと問えば又従兄妹だそうです。やっぱり身分の高い女性でしたかミーシャさん。私は取りあえず、子供のした事だから大丈夫と言っておきました。
あんまり目くじら立てて怒るような事じゃないしね。
今日のお昼は一人で完食。ディーさんお仕事忙しくって抜けれなかったらしい。大丈夫かなぁ。ちゃんとお昼食べたのかしらん?
午後は、ヨランダさんがやって来て、工房の皆で『徹夜で仕上げちゃった☆』ドレスの数々を頂きました。どれも動きやすそうでありがたい。何処から聞いたのか翼竜に乗る時のパンツルックも一揃い。
有難うヨランダさん~嬉しいよ☆と言ったらハグされそうになりました(笑)
ミーシャさんにストップかけられて未遂に終わったけどね。そんな感じで午後は過ぎ、今は夜です。食事を食べ終わってミーシャさんのお茶を頂いてた時だった。
「そういえば、昼間は大変だったらしいなミオン」
「あぁ~やっぱり耳に入っちゃったよね??? いきなり職権乱用しちゃったんだけど………ごめんなさい………」
「いや、あれでいい。子供のしたことだしな。あまりきつい事をすれば狭量と笑われる。加減が面倒なんだ。宰相がミオンをほめていたぞ?」
「えぇ? ちょっと待ってどんな話がそっちに行ってるの?? 噂話で誇張されてるんじゃ………」
「いや、正確だと思うぞ? 宰相自身、あの場に行き合わせたと言っていた。まぁ、途中からだったらしいが、何があってそうなったのかは女官や衛士に聞いたらしいからな」
うわっ恥ずかしい!! そんな人にも見られてたのかあ………。そしてどうやら勝手に不問に処しちゃった件も大丈夫な模様。ぴょこぴょこ跳ねてた心臓も落ち着きを取り戻した。
「エヴァは俺の母の妹の子でな。年の離れた姉がいるんだが一番末子で甘やかされて育ってる。なかなかきかん気が強くてな………」
そう言ってディーさん苦笑い。
「そう言えば、エヴァの父親のヴァルレア公が昼間慌ててすっ飛んで来てな? 妃殿下に公式に謝罪をとか言ってたから断っておいた。もう片が着いた事だとな。それなら、何か贈り物をと言っていたが何か来たか?」
「あぁ~それでかぁ………」
いきなり、大量の花が届いた時は驚いた。それに宝石とかね? ただ、余程焦ってたのか、女官さん達に何で私に贈り物をしたいのか言わなかったらしい。
聞いても何とか妃殿下に!!! の一点張り。宝石は辞退して返そうと思ったんだけど返しに戻ってもらったらもういなかったそうだ。その話をディーさんにすると大笑い。
「余程焦ったのだろうな。公は存外小心者だから。宝石は本当にいらないのか?」
貰っておいてもいいぞとディーさん。
「んー、お花は可哀想だから貰っておくとしても、宝石はね………今回の理由にはそぐわないかな」
「そうか、なら理由を付けて送り返すといい。明日にでもな」
「わかったそうする」
そう言ってお茶を啜る。ヴァルレア公小心過ぎる。ちょっと面白いけど。
明日宝石返す時も誤解されないように理由をミーシャさんに書いて貰おう。
私、こっちの字は書けないしね。そうだ、字も教えて貰わないとなぁ………。なんて考えてると、まるで私の思考を読んだかのようにディーさんが『そういえばミオンは明日から勉強だな』と。
「そうだよう!!! 楽しみだけどちゃんとできるか心配。リン先生にできの悪い生徒でも諦めないでって言わないと」
「そんなに勉強が苦手なのか?」
「そういうわけでもないけどさ? こっちとあっちじゃ勝手が違うだろうし」
「まぁ、でも勉強と言うのは当人のやる気が一番左右するものだろう。ミオンのやる気があれば大丈夫だ」
「そうかなぁ、そうだといいなぁ」
やる気だけはあるんだよね。早く色々覚えたいって言う。それが空回りしない事を祈りつつ私は最後の一口、お茶を啜った。