きっかけは平凡で特別な夏です
私は玲瓏高校に通っている、「一ノ瀬零織」だ。よく、名前が読めないと言われる。そんな私だが、今、片想いの相手がいるんだ。その人の名前は「香月飛貴」。一応幼馴染で、今は一つ上の先輩だ。こちらも名前が難しい。先輩には、何回もアプローチしているのに一向に気づいてくれない。ただ、今日一緒に帰る約束をしたので、チャンスが出来た。是非私の行方を見守ってて欲しい。
「ヤバッ!飛貴と帰る約束してるのに、、、」
教室に水筒を忘れてしまったのだ。暑い中飛貴を待たせるわけにはいかない。どうしたものか。後15分程したら飛貴が来てしまう。
「飛貴、、、待っててね すぐ取ってくるから!」
少女はそこで動きを止めた。
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「飛貴、今日一緒に帰ろーぜ。」
「ごめんな。今日は後輩に誘われてんだ。」
「やっぱり?毎日誘われてね?お前。」
こう言われることが多いな。でも今日は重要度が違う。
「幼馴染の後輩なんだ。久しぶりに会えるから意外と楽しみなんだよ。」
俺の口からはこう言葉が漏れた。正直本当に楽しみで誘われた時は嬉しかった。
「だからごめんな。また今度帰ろうぜ。」
こう言って俺はこの場から去った。俺は香月飛貴。自分で言うのもなんだが、そこそこルックスはいい方だ。勉強も運動も平均以上に出来る。でも、欠点もあるんだ。話すと長くなるんだが、ざっくり言うと「緊張すると、その場の時を止めてしまう」と言うものだ。時を止めると言うよりは、その場と言う「存在」ごと消し去る訳だ。だから、今まで告白されてもその瞬間は無かったことになっていた。俺自身も告白されたことに気づけない。そんな状態だ。ただ、逆に言えば「緊張すればその事実を無かったことに出来る」とも捉えられる。いつからあったか分からない能力だが、なんとか使って過ごしている。今日は後輩、いや、恋人であり幼馴染と一緒に帰るんだ。緊張したらその時間がないことになってしまう。気をつけなければ。その矢先に、恋人の上に鉄筋コンクリートの壁が落ちて行く光景を見た。
俺の能力は、いや俺は何の役にも立たない人間だった。でも、この瞬間だけ、消えてしまうこの時だけ役に立てた。君を守れるから。
こう思った瞬間、永遠に君と帰ることはない未来を作り出してしまった。




