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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"昼食"

掲載日:2026/03/18

からからとした、機械の音


椅子に座って把手を回すと、桃色の蚯蚓(みみず)──重なった挽肉の束が夥しい数の穴から蠢き落ちる

或る意味ではこれが、本来造り得ない僕たちの子供だ


事実として肉は、僕たちの躰から摘出したものだった



雰囲気を出す為に照明は落としてある


カーテンの隙間からひらひらと陽光が床に細い線を描いて居る以外は、キッチンには光が存在し無い

これは作業の合間、隣に座った君と唇を重ねるのに、とても適して居た



「ねえ」


君の指に、まぐわうみたいに片手の指を絡めて

僕はそれでも視線を挽肉から離す事が出来なかった


「結ばれていくよ」



君を自分のものにしたいから

僕はわざと液躰音を立てて、幾度も君の唇を吸った


繰り返すうち、いつしか絡めた指の間が汗で濡れていく

きっと強く握り締め過ぎてしまって居たと思うけど、君は考えの読めない顔で静かに笑って居た



「………二人で死のうよ」


近くに刃物が在ると、こんな事ばかり考えてしまう

『拒絶されたら嫌だな』と思って君の顔を視ようとしたら、不意に抱き締められた


部屋を満たして居た機械の音が止む

代わりに、自分の心臓が鼓動する音が聞こえてくる



「言ってみただけだよ」


「ごめん」


気まずく感じて機械の下のボウルを視る

量から逆算すると、精肉はどうやら終了して居たみたいだ


僕は自分を抱いている腕を優しく離すと、背もたれに掛けて在るエプロンをして、鶏卵をボウルの挽肉へと割り落とした




「Eat Well, Live Well」


食餌を前にした時、必ず君は食べる前にそう唱える

僕も合わせて「Eat Well, Live Well!」と唱えると、胡椒と炎、血、そして甘やかな肉の匂いをすんすんと鼻孔に吸い込んだ


朝食が終わる頃

食肉の摘出によって抉れて居た僕たちの躰は、完全に修復されて居た


僕は水に漬けたフライパンに洗剤を垂らしながら、「今日は何をして遊ぼう」と考えて居た

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