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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第五章 悪神との戦い 決着編
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第72話 大悪魔の独白 その3 そして…

 何時間ぐらい戦ってたんだろうな。なんとかシルバとエンジュをぶっ倒した所までは覚えてたんだが、気付けばあたしは寝っ転がって空を見上げてたよ。

 痛かったな…傷だらけでさ。身体の傷がじゃない。心の傷がさ…。

 そんなあたしにネネが近付いてきてこう言ったんだよ。


『ミユミユ、もうこれで終わりだよ。異世界から来た者ってバレたらダメだから、この世界の法であなたを裁けない。だからヤオ様の元で反省しなさい。』


 ネネがその言葉を言い終わるとオタックロードは歓声に包まれた…そこからあいつは『オタクの女神』なんて呼ばれて伝説のメイドとなった。

 あたしはと言うと、そのままヤオの所に連れて行かれてさ、10年以上も冷や飯を食わされる羽目になるんだよ。


 大暴れしてさ、ヤオの企みをみんなにバラしてどうにかしてやろうなんて思う元気も無かった。

 あたしは恨みを抱えたまま、ただただ静かに時が過ぎるのを待ってた。場所も…友も…全てを失ったままね…。


 そして、大事件のほとぼりが冷めて、みんなの記憶も曖昧になった頃、あたしは外に出てまた活動を再開するんだけど…。

 その時出会ったのが悪の宝玉を持った神だったんだ。『一緒にこのヤオの世界を無茶苦茶にしてやろう』って誘われてすぐにその話に乗った。


 後はみなさんご存知のって話さ…。もう神に抗ったりするのは不可能だって思ってるよ。あんな強大な力を持った存在に対して反旗を翻そうが全部無駄なんだって痛いほど思い知らされた…。



 でもな…見てみろよ…あたし…。目の前の光景をさ…。



――ラヴィとヤオにやられたダメージによって地面に伏していたミユミユは、心の中で今までの事を振り返っていると、目の前には神に向かって堂々と戦いを挑むラヴィとアルマの姿がずっと目に映っていた。


「なんなんだよ…。あいつら…。無理だろ…。あんなのに打ち勝つなんて…。」


 全てを諦めたミユミユに見せつけるが如く戦う勇者と魔王の姿は、彼女の中に燻っていた火をまた燃え上がらせようとしている。


「ほら…見ろ…。勇者の野郎は片腕を斬られやがった…。一人になった魔王の方も詰んだな…。頑張ってヤオの剣を折る事に成功はしたみてーだが…。」


 ラヴィ達の戦況を眺めていたミユミユは、劣勢に転じていく様子に複雑な気持ちになっていた。


「なんか…胸が熱くなってくる…。あたしはどうしたら良いんだ…。分かんねーよ…。」


 そして、とうとうヤオがアルマにトドメを刺そうと悪の力を溜めた腕を振り上げている。

 それを助けようと、隻腕のまま走り出したラヴィの姿も見える。


「いや…間に合わねーよ…。なんでそんなに必死になれんだよ…。諦めちまえば良いだろ…。それに、てめぇらには元々は関係ない事だろーが…。

命を賭けてまでどうしたいんだよ…。」


 その時、ミユミユの頭の中で、ある人物の声が聞こえる。


『ミユミユ…。ごめんね…あの時あなたの事を信じてあげられなくて…。真実を知っても…今日のために助ける事もできなくてごめんなさい…。

でも…あなたはまだ間に合う。やり直せる。だから…ラヴィちゃん達を助けてあげて!

あなたがもう一度生きるために…!幸せな日常を歩んでいくために…!』


 突然頭に語りかけてきたネネの声に、ミユミユの目からは止め処なく涙が溢れてくる。


「ネネ…あたしこそごめんね…。何も知らなかったとはいえ…あんな事して…。本当にごめんね…。ずっと…ずっと普通に話したかったのに…!全部相談すれば良かったのに…!

せめて…少しでも償いができるのなら…!ネネが大事に守ってきたものを…!あたしが守るよ…!

大好きだった…大好きだったよ…ネネ!」


 気付くと、ミユミユは今にも振り下ろされそうなヤオの腕に向かって、支配の力を使って黒い霧を放っていた。

 その事により、ヤオの腕は一瞬動きを止める。だが、直ぐ様その黒い霧を引き千切ると、改めてアルマに向けて悪の力をぶつけようとする。


 しかし、その一瞬の隙のおかげで、走ってきていたラヴィの一撃が間に合ったのだ。


「その手をどけろ!ヤオ!!」


 勇者の力が込められたラヴィの飛び蹴りを、顔面にモロに受けたヤオは、また数十メートルも吹き飛ばされる。

 アルマを助けられたのは良かったが、その飛び蹴りでもダメージがほぼ無いヤオはすぐに立ち上がる。


「ミユミユメ…ヨケイナコトヲ…!」


 ラヴィがアルマに手を貸して立ち上がらせると、そこにミユミユがフラフラしながら歩いてきた。


「まさか…お前が助けてくれるなんて思ってなかったぞ…。ありがとう…。」


「礼はいいよ。その代わり少しだけ質問させろ。てめぇらはなんであいつに立ち向かえる?なんでそこまでして世界を守ろうとする?」


 ミユミユの質問に、ラヴィとアルマは一度顔を見合わせると、またミユミユの方を見て同時に答える。


「勇者だからだ!」「魔王だからだ!」


 ミユミユが想像していた通りの答えに、思わず顔に笑みがこぼれる。

 そういう風に答えたら全力で手助けをしようとミユミユは決めていたのだ。


「そうかよ。そりゃあ大変だな。少しだけ手伝ってやるよ。」


「お前が味方についてくれると助かる。」


「なぁ…。人ってやり直せると思うか…?」


「当たり前だろう!私だって前の世界でやらかした事をやり直すために今戦っているんだ!何度でも反省しやり直せば良い!それができるからこそ人は成長するんだろう?」


「キャハハ!まさか悪魔が勇者に励まされる時が来るなんてな!分かんねーもんだな!」


 すると、ミユミユの胸から大きな光の塊が現れてラヴィの宝玉へと吸い込まれていく。


【善の力を手に入れました。 種類は改心。】


 そして、宝玉を介してミユミユの気持ちをラヴィは読み取る。


「うむ!良い事だぞ!ミユミユ!ネネも喜んでいるだろうな!」


「うっせーよ!何の事だよ!」


「おい!我を置いて話を進めるな!」


「で?ボロボロのあたしらだけであいつに勝てるのか?」


「余計な事は考えなくていい!勝つんだ!」


 悪のオーラをより一層強めながら歩いてくるヤオへと向かって3人は構える。


 そして、元は敵同士であるはずの、勇者と魔王と悪魔が手を組んで最強のトリオが完成したのだ。


 神に抗うこの戦いの終わりが近い事を、この場に居る全員が確信するのであった。

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