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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第五章 悪神との戦い 決着編
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第71話 大悪魔の独白 その2

 あたしは最初、ネネの事が嫌いだった。元気で…晴れやかで…みんなから人気もあって…。

 陰気なあたしとは正反対の彼女が近付いてくる度に精一杯の嫌な顔をしてやったよ。


『ミユミユ!今日のお店の調子はどう?』


 あたしはその頃、『ミュウ・クーガー』って名前を捨てて、『ミユミユ』って名乗り出してたんだ。


『うるせーよ。絡んでくんなよ。』


『またそんな事言って!私達で一本橋を盛り上げていくんでしょ!もうシルバやエンジュと揉めたりしたらダメだからね!』


『はいはい…。それじゃあな。』


 毎度毎度、あたしの世話を焼きにやって来ては小言を言ってたよ。メイドだからってあたしにまで世話なんかしなくて良かったんだよ。


 でもな…段々と距離が縮まってくると、ネネとのこういった関係も悪くないか…そんな風に思いだしてた。


 あれは忘れもしない暑い夏の日だったな。一本橋のオタックロードで一番初めに誰が店を出すかって話になったんだよ。

 群雄割拠のコンカフェ界隈は大騒ぎになりだして、ヤオがやたらと連れてきていた異世界の人間達が虎視眈々とその場所を狙ってた。


 それは何故か?それはな、どこの店がNo.1かって争いもあったが、それだけじゃなくて、オタックロードはヤオが創った神の力が込められた聖地のようなものだったからだ。


 で…ある日…。とうとうヤオはあたしに重大な任務を与えてきやがった。


『オタックロードを巡る争いの黒幕をミユミユにやってほしいんだ。』


『なんであたしなんだよ…。あたしはもうそういうのに関わりたくないんだ。』


『実はね、僕のこの世界でエネルギーが枯渇しそうなんだ。人間は何の得にもならない不毛な争いばかりするから…。

そこで、オタックロードという神聖な場所で善 対 悪という構図をとってほしいんだ。悪を打ち倒す善を演じて人々から力を回収しないといけない。

じゃないとこの世界を僕は救う事ができないんだよ。』


『あたしじゃなくても良いだろ!それに、あたしがどんな気持ちで前の世界で生きていたかよく知ってるだろうが!』


『君ほど絶大な悪の力を持っている者がいないんだよ…。だから出来レースで良いんだ!人々がその戦いの結末さえ見てくれればエネルギーは手に入るから!』


『………。英雄は誰がやるんだよ?』


『ネネさ。』


 やっぱりなって感じだったよ。そりゃああれだけ人から信頼されて人気もあるネネが、悪魔のあたしを倒せば大盛り上がりだろうな。


『この街が…好きでしょ?失いたくないでしょ?』


 ヤオの言う通り、あたしはいつの間にかこの街と人が大好きになっていた。

 当然、ネネやシルバやエンジュも大事な仲間のように感じてたさ。


『残酷な質問をするんだな…。で、あたしは打ち倒された後どうなるんだ?』


『それは台本をネネ達にも渡しておくから!しっかりこれからも君がこの街でみんなと生きていけるようにするさ!』


 騙されているのかもしれない。あたしだってバカじゃないんだ。そんな上手く事が運ぶなんて思っていなかった。


 でも結局あたしはヤオの頼みを了承した。そして、あたしは悪を演じながら、オタックロードを手に入れるために武力行使を行っていくんだ。


 悪を演じている時…周りから蔑んだ目で見られるんだよ。


『あー…。なんか…懐かしいな…。やっぱ人からこんな目で見られると心にくるや…。』


 あたしはそんな事を思いながらやりたくもない役を演じ続けた。

 そしたらとうとうネネがあたしの前に立ちはだかった。両隣にはシルバとエンジュも居たな。


 やっとヤオの作った物語も佳境に突入したんだなって思ったよ。これで終われる。あたしは嬉しかった。

 後は台本通りに、ネネがあたしを倒したら、あたしは改心して『はい!チャンチャン!』ってはずだったんだ。


 だけどな…。ネネ達のあたしを見る目は…友を見る目じゃなかった。憐れみや怒りが籠もっててさ…とてもじゃないが演技には見えなかった…。


『ミユミユ!なんでこんな事をするの!?裏でもとてつもなく悪い事をしているってヤオ様から聞いたよ!』


『あーしの店を無茶苦茶にしたのもお前だって話だぞ。他のコンカフェの店舗も潰しまくっててみんなから恨まれまくってるぞ!』


『最近多発している誘拐もあなたみたいね〜。コンカフェの女の子達を拐って拷問をしたりしてるって聞いたわよ〜。』


『お…おい…。何の話をしている…?』


 ネネ達の言う事全てが身に覚えのない事だった。一体何の話をしているのかあたしには理解できなかった。

 オタックロードのど真ん中で、人がたくさん見ている中、そんな事言い出すもんだから…人々があたしに対して燃え盛るぐらいの憎悪をぶつけてくる。


『あ…あたしじゃないぞ!そんな事知らない…!』


 どれだけ取り繕おうとしても無駄だったよ。日頃の行いも良い方じゃなかったしな…。


『ミユミユ…ヤオ様が嘘をつくなんて有り得ないでしょ…。それに一本橋のみんなからもどんどん情報が入ってきてる…。

一体どうしちゃったの?何かあったなら私に相談してくれれば良かったんだよ!』


『だ…だから…あたしは…。』


『もう遅いんだ…。この街で起きた事は私達で解決しろってヤオ様が言ってた…。だから…。』


 そういってネネがあたしに向けてきたのは模造刀じゃなくて本物の剣だった。


 慌てたあたしはさ、たまたま向かいの奥にあるビルの屋上に目がいったんだよ。

 それじゃあそこにはさ…不気味で悪意に満ちた笑顔であたしを見るヤオが立っていやがった…。


 それで全てを察したよ。思わずケラケラと笑ってしまうぐらいにね。


『また…あたしだけが…。』


 心の中でそう思ったあたしは、覚悟を決めてネネ達に対して支配の力の黒い霧を向けたんだ。

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