第70話 大悪魔の独白 その1
あたしは悪魔として産まれた。神から幼い頃から悪として生きる事を強いられてきた。
いずれ現れる英雄に倒される運命だと言われ、その時が来るまでは人々を騙し、殺し、悪行の限りを尽くせって教えられてきた。
そんな決められた人生に、物心がつく頃にはほとほと嫌気が差していた。あたしは同じ年頃の友達を作って目一杯遊びたかったんだ。
悪い事なんてしたくなかった。みんなと仲良くしたかった。人並みに恋愛なんかに興味を持ったりもした。
でも、それを神は許さなかった。善と悪が共存するからこそ世界が保たれている。神が人々から力を得るには悪が絶対必要だと…お前は名誉な生き方ができて幸せなんだと…そうやって洗脳に近い教育を受け続けて、あたしは悪魔として成長を遂げていくんだ。
だから早く英雄が現れる事をあたしはずっと待ち望んでいた。
名誉だから?運命だから?神のためだから?
違う。
こんな人生を早く終わらせたかったからだ。人々からの憎悪を受け続ける呪われた道に…早く終着点を見つけたかったんだ。
そして、とうとうあたしの前に英雄を名乗る男が現れた。
神は嬉々としてあたしとその男が対峙する所を見ていたよ。
なぜなら、その頃にはあたしは充分過ぎるほどの悪行を重ね、いつのまにか立派な魔王になっていた。
内包する悪の力も、人々からの憎悪も、英雄に打ち倒されるために集めてきた。
そんな巨悪が英雄に打ち倒された時、人々から手に入れられる力を想像して、神は有頂天になっていたんだろうな。
あたしは、そんな裏話があるなんて知らない英雄の男に『この悪魔が!!』『滅びろ!!』なんて色々言われてさ…。これでも女の子なんだぞ…傷付くだろ…。
こうして、あたしは自分の望んだ終着点…神の作ったシナリオのエンディングを迎える事になるんだ。
やっと訪れたその時にどう思ったか…。
『クソ喰らえ!!』だよ!
だからあたしは支配の力で英雄を殺した。英雄の最期はあたしに操られての自殺さ。
涙を流しながら許しを請うあいつの姿は滑稽だったな。
いや、それを見ながらいつの間にか泣いていたあたしが一番滑稽か…。
そしたらさ、神が怒りまくってさ…。
『何故貴様が生き残っている!?貴様は死ぬ運命なのに!どうするつもりだ!?』
はは…。どうするもこうするも知らねーよって感じだった。あたしは何もかもにイラついてた。
だからあたしはそのまま神にケンカを売った。死ぬ運命だったって言うなら丁度良かったんだ。
神になんて勝てるはずも無く、何度も何度もあたしは倒され、全身の傷の痛みを感じなくなった頃だったかな。
突然、空高くに光が渦巻いたようなモノが現れたんだ。
そしたらさ、そこからまた神だって名乗る奴が出てきたんだよ。
新しく現れた神と名乗る男は、あたしの世界の神と少し言い合いのような事をしたかと思うと、腰に差した剣を抜いて相手を斬って殺しちまった。
『とんでもない神の世界に産まれたんだね。僕は君を迎えに来たんだ。僕の世界に来てくれないか?』
『その世界はどんな所?』
『君の事を必要とする世界だよ。』
そうやって優しくあたしに声を掛けてきた神を名乗る男…『ヤオ』にあたしはついていく事にしたんだ。
ヤオはあたしの傷を治してくれると、異世界へと続くゲートへと手を引いてくれた。
ゲートをくぐる時、あたしの後ろから神を失った世界が崩れていく音が聞こえてきたよ。
複雑な気持ちだったけど…清々したって気持ちが一番大きかったかな。
気付けばあたしはゲートを抜けて、ヤオが創った世界にやって来ていた。
目の前に広がる光景を初めて見た時の衝撃は忘れられないなぁ。
そこからは、一本橋にヤオが用意してくれた悪魔っ子コンセプトのお店を与えられ、あたしはこれでもかってぐらい平和な時間を満喫していた。
そのぐらいの頃かな、ネネやシルバやエンジュと出会ったのは…。
ヤオはネネを紹介する時にこう言ったのを覚えているよ。
『彼女は英雄なんだよ。』
あたしはその言葉を聞くと、嫌の予感を感じて胸が大きく跳ねるのを感じたね…。
で…それは…やっぱりあたしの予感は当たってさ…大事件に繋がっていくんだ…。




