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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第一章 勇者と魔王 転移編
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第6話 勇者は退かず!!

「す!ストップ!!ダメだよラヴィちゃん!」


 高柳が獄炎鳥テキーラを討伐した者と勘違いして臨戦態勢バリバリのラヴィを慌ててルルが止めに入った。


「ルルよ!何故止めるのだ!?テキーラだぞ!?あのテキーラを簡単にプレゼントできるような者の相手なぞ私にしかできん!!」


「大丈夫だよ!テキーラなら私が相手するから!慣れてるから私にまかせて!新人のラヴィちゃんは下がってていいよ!」


(な…!なんだと!?ルルもテキーラを相手に戦ってきたのか!?こんな大人しそうな見た目で……。ハッ!?メガネだからか!?そういえば大魔導士はみなメガネだった気がする!メガネっ子…恐るべし!!)


 1人で盛大な勘違いをしてワナワナしているラヴィを見て楽しんでいるのか、高柳はまたニヤニヤとしながらルルに注文をする。


「おいおい、俺はこの金髪の子にショットをご褒美であげようとしてるんだぜ。見た感じ未成年ってわけでもないだろう。お前何歳だ?」


「にじゅういっっっさいっっ!!!!」


「お…おう…じゃあ酒を飲めるじゃないか。ただ拳で抵抗はしてくるなよ…。」


 こんなにも鼻息荒く自分の年齢を言う女の子に出会った事の無かった高柳は少し尻込みするような形になった。


「いや…でも高柳様!ラヴィちゃんは今日からうちで働くことになった新人メイドなのです!どうか…」


「ふふふ…その新人メイドはどうやらやる気って感じだぜ…。殺る気って言った方が良いかもしれんがな…。」


 必死でラヴィを庇おうとするルルの肩にポンッと手を置いて、ラヴィは勇者らしい笑顔を作り、ルルを安心させようとする。


「大丈夫だ…ルルよ。私はこの世界ではみなを守ると誓ったのだ。獄炎鳥テキーラを持ってくるのだ。」


「獄炎鳥って何!?もう!どうなっても知らないよ!」


 勇ましいラヴィと止めたいルルの間に割って入って高柳がまたいらない提案をする。


「ふふふ、観覧車も持ってこいよ。その方が盛り上がるだろ。」


(観覧者!?私達の戦いを観戦したい者を連れてくるのか!良いだろう、コロッセオでもどこでも行くぞ!)


 『もうどうなっても知りませんから!』と言い残してルルはキッチンの奥へと消えていく。

 そして5分後、ラヴィの目の前に現れたテキーラは、自分が思っていたものとは全く違う物だった。

 それは、キラキラ光る観覧車の置き物に乗せられたショットグラスのお酒だった。それが12杯もくるくる回っている。


(な…なんだこれは!?これが討伐されたテキーラの成れの果てというわけか!?この液体は……テキーラの血か!?)


 まだ勘違いをして勝手に驚いているラヴィに高柳が命令をする。


「ラヴィちゃんだっけ?どうぞ、ご褒美ドリンクだよ。さぁ!飲みなよ!」


 やたらと嬉しそうに盛り上がっている高柳の横で、ラヴィは恐る恐る観覧車から1つのショットグラスを手に取った。人としての本能なのだろうか、そのグラスに入った液体の匂いをラヴィは嗅いだ。


「くっっっっさ!!!」


「だから言ったじゃない!凄く強いんだから!ラヴィちゃんじゃなくて私や他の強い子が飲むから!」


 ルルが他のお酒の強いメイドの子を探しに行こうとするのをラヴィがガシッと肩を掴んで止める。


「強い者など呼ばなくても大丈夫だ!ルルよ!私を信じろ!なぜなら!私は!!!」


 ラヴィは気合いを入れるために大声でそう発すると、ショットグラスを天井に向け高く掲げる。


「勇者だ!!!!!!」


 そして、持っていたグラスの中に入ったテキーラを一気に喉の奥へと流し込む。それはラヴィの喉、食道、胃へと伝わる道を焼くような熱さとともに流れ込んでいく。


(こ…これが獄炎鳥テキーラの血液か…!熱い!喉から胃までの道筋がハッキリと分かる程に熱いっ!だが負けられないっ!)


 カンッと中身を飲み干したショットグラスをテーブルに置く男らしいラヴィを見て、周りから『おーっ!』と少し歓声が上がる。


「どうだ…高柳殿…。あなたは飲まないのか?」


「俺は飲まねーよ。さぁ!後11杯!楽しませておくれよ!ははははっ!」


 ラヴィは11杯という言葉にゾクリとする。この灼熱のテキーラを後11杯も飲まなければならないのだ。

 だが、少し気後れしそうになったラヴィは、自分で自分を鼓舞し、どんどんと観覧車に乗ったテキーラのショットを飲み干していく。


(私は勇者だ!!みんなを守るのだ!!)


 そしてラヴィが6杯目のテキーラを飲んだ後、自分の身体に異変が起きている事に気付く。頭がフラフラし、目の焦点も合わなくなってきた。何より胃から込み上げる何かがラヴィを一番苦しめてくる。

 横で自分を支えてくれているルルの声も段々と何を言っているのか分からなくなってきた。


(こ…ここまでなのか…私は…こんなにも弱いのか…。)


 全身が言う事を聞かなくなり、ラヴィが自分の弱さに負けてしまいそうになった時だった。

 ラヴィの背中側からギュッと誰かが優しくラヴィの全身を抱きしめてきた。そして、ラヴィの横から顔を出した女性を見て高柳は、先程までの傲慢な態度とは打って変わって狼狽え始めた。


「ね……ネネっ!?」


「あらあら〜、楽しそうなパーティーね!私も参加させてもらいましょうか!」


 笑顔の裏に、獄炎鳥テキーラよりも燃え上がるネネの怒りが誰の目にも見て取れた。

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