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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第四章 悪神との戦い 真相編
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第58話 勇者と魔王、絶望に抗う

 悪神の放った暗黒の力が地上を飲み込むように爆発をする。黒い竜巻が周囲を薙ぎ倒すその威力には誰も耐えられずにただ破壊される事に身を任せるしかできなかった。

 そして、ゆっくりと暗黒の力が晴れると、空中からその光景を見下ろしていた悪神は、ラヴィ達全員が悪のエネルギーにより倒れたのを確認するとゆっくりと地上に降り立った。


「あらら、まだ全員微かに息があるみたいだね。セリーナ、君の仕業かい?」


 名前を呼ばれたセリーナが瓦礫の山からヨロヨロと立ち上がる。女神であるはずのセリーナでさえ全身に大怪我を負っている。


「わしが…女神の力で全員を包んで守った…。じゃが…皆…動けんようじゃな…。バカげた力を使いおって…!」


「どうだい?悪の力は凄まじいだろう?僕はこの力を使って神も人も全てを無にする!」


「大馬鹿者が!そんな事をして何になるというんじゃ!?」


「神も人も滅すれば…この世界から傷付く者も、傷付ける者も居なくなる。善だ悪だの…力がどうだの…もう悩まなくて済むようになるじゃないか。」


「虚無の世界が正しいと言うのか!?」


「あぁ、そうさ。それが一番正しい。セリーナ、もう良いんだ…君もゆっくり眠るがいい…。」


 セリーナの説得にも全く聞く耳を持たない悪神に堕ちたヤオは、悲しみと悔しさで歪んだ顔をしているセリーナに対して手をかざした。

 その手にはまた悪の力が込められており、セリーナにトドメを刺すために直接打ち込むのだろう。

 だが、先程の攻撃によりできた巨大なクレーターの端からある者がその行動に待ったをかける。


「そんなものは!!何も正しくはない!!」


 その声の主は聖剣を構えて立つラヴィであった。全身から血が流れ、立っているのもやっとの状態なのだろうが、その表情には悪神に対する恐怖などは微塵も感じられない。


「この世界が…!虚無になっても良いなんて事は絶対にない!そんな事…!私が…勇者が絶対にさせないぞ…!」


「元々君はこの世界の住人じゃないだろう?何故命を賭けてまで戦うんだい?」


「私はこの世界で色んな事を学んだ!仲間の大切さ、勇者としてあるべき姿、そんな大事な事を教えてくれたこの世界に私が命を賭けるのは当たり前だ!たとえ神を相手にする事になろうとも!」


「理解できないね。今の僕を見ても万が一勝機があるとでも言うのかい?」


「勝機か…無いな。」


「ならばそこで大人しく世界が終焉を迎える所を見ていたらどうだい!?」


「私一人では勝機が無いという事だ!アヤネ!へばっている場合ではないぞ!」


 ラヴィが檄を飛ばすと、口から血を吐きながらアヤネが立ち上がる。


「うる…せぇよ!分かってるから調子に乗んな!ラヴィ!」


「悪態をつけるのならばまだ大丈夫だな。もう少ししたらあのクサレ魔王もこちらに向かってくるだろう。全員の力を持ってお前を止めるぞ!ヤオ!」


 満身創痍の中、絶対的な強さを持つヤオに立ち向かおうとしているラヴィとアヤネを見て、シルバ達もオーラを纏い立ち上がる。


「あー痛ってぇな!こんな攻撃受けたの久々だ!でもあーしを殺したいならもうちょい頑張りなよ!」


「せっかく綺麗にしてたのに羽がドロドロになったわ〜。まぁでもネネのためにももう一踏ん張りしようかしらねぇ〜。」


 そして、ラヴィ、アヤネ、シルバ、エンジュの4人は横一列に並ぶと、折れない心でヤオへ向けて敵意を向ける。


「君達は絶望を感じないのかい?本当に勝てるなんて思っていないだろ?諦めたら良いじゃないか。」


「諦める?それだけは絶対にない!そして私達が負ける事もない!お前だけは死んでも止める!それにな…。」


「それに?なんだい?」


 ラヴィは少し俯き加減でニヤリと不敵な笑みを浮かべる。


「来たぞ。アホ魔王が。」


 ラヴィのそのセリフと共に、空から大笑いをしながらアルマが降ってきた。

 そして、その後に続いてレナ達がはぁはぁ言いながら走ってきている。


「フハハハハ!!!どうした!?ラヴィよ!まだこちらは終わっておらんではないか!我を待っていてくれたのか!?仕方がない!我が助けてやろう!」


「うるさいぞ!童貞魔王など待ってはいない!」


「ど!どどど童貞ではないわ!適当な事を言うな!」


「ニャ〜…はぁはぁ…アルマは…本当は一瞬でラヴィ達の気配が消えたから心配で大急ぎでここに来たんだよ!」


「ぬお!?適当な事を抜かすな!猫娘!」


「ライオンだってば!」


 箒に乗って楽をしているノンノ以外はシルヴィアも膝に手をついて息を切らせている。


「はぁはぁ…なんとか来てみたはいいものの…。とんでもないのがいるわね…。」


「ノンノはとりあえずみんなの手当てをするね!」


 ノンノが全員に手当てを施すために箒から降りると、遠くからルルの声が聞こえてきた。


「私も!手伝います!」


「ルル!?どうしてここに来たのだ!?」


 どり〜むは〜とを守っているはずのルルが現れたことにラヴィは驚く。


「私も戦うためだよ!みんながこんな状況なのにジッとなんてしてられないよ!」


「しかし!どり〜むは〜とはどうする!?」


「そこはガイアスさんが守ってくれてるから大丈夫!それに、こっちを何とかしないと守ってても意味ないよ!」


「そうか…魔剣王が守ってくれているなら安心だな。」


 そして、ルルは話もそこそこに全員にまとめて治癒魔法を掛ける。ノンノの腐敗の力も合わさって全員の傷がみるみる癒えていく。

 そんな様子を怪訝な表情で見ていたヤオに、しばらく沈黙していたセリーナが話し掛けた。


「どうじゃ?人の底力は?人を諦めたお主には理解できぬか?」


「理解…できないね…。何故苦しむ道を選ぶんだ。」


「まぁ良いわ!善のヤオはお主にこの光景を見せたかったはずじゃ!だから最後まで諦めずに手を回しておったんじゃからな!

人の足掻きの強大な力を目の当たりにせい!」


 セリーナのその言葉と同時に、ラヴィ達は限界までオーラを纏うと臨戦態勢を取る。

 それを座りながら呆然と遠くで見ていたミユミユは、自分がどうすれば良いのか分からなくなっていた。


「あたしは…どうすれば良いんだ…。今さら一体何ができるんだ…。」


 ミユミユのその悲痛な呟きは、ヤオの悪の力が放つ風の音で掻き消される。


「足掻き…か…。良いだろう。もっと絶望を君達にプレゼントする事にしよう。」


 すると、ヤオが地面に両手を付くと、そこを中心に悪の力を根源とした黒い魔法陣のようなものが広く展開される。

 その魔法陣から黒い光が強く放たれると、そこから現れたのは、背丈が10mはあろうかという2体の黒い巨人であった。その巨人の手にはそれぞれ巨大な剣と斧が握られている。


「僕の力で悪神の化身を召喚させて貰ったよ。分かってはいると思うけど、2体とも神レベルで強いから気を付けてね。」


 ヤオに言われなくても、相対する全員の肌がチリチリと逆立つほどに、黒の巨人から嫌というほど強さが伝わってくる。


 そして今、役者は揃い、世界の命運を握る最終決戦が始まる。

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