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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第三章 悪神との戦い 始まり編
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第40話 武の国の拳士と天誅の暗殺者

 レナが咆哮によって痺れて動けないキョウに向けて拳を握る。その右腕は力を入れるとどんどんと太くなっていく。

 そして、腕が2倍近く膨れ上がった所でニコリと笑いながらレナはキョウを殴るために構えた。

 その腕はもはや女性の腕には見えず、筋肉が隆起し、浮き出た血管が美しく腕全体を走り、まるで年月を重ねた大木を思わせる。


「ちょっ!ちょっと待つでありんす!そんなもので殴られたら…!」


「ニャハ!大丈夫!痛みを感じる前に意識飛ぶはずだから!まぁ…しばらくは意識戻らないけどごめんね!お腹を狙うから力入れなよ!」


(これは…!お腹と言いつつ顔面を狙うパターンでありんすね!騙されんせんよ!)


 キョウがその一撃をなんとか避けようと必死で動こうとしているのはピクピクと動く体を見ていれば分かるが、その努力も虚しく、体は動かないのでキョウは顔面に力を入れてもうすぐ訪れるであろう衝撃に備える。


「じゃあ!バイバイ!!」


 レナはそう言うと左足を踏み込み、豪腕と化した右腕を大きく引いて勢いをつける。

 最大限まで振りかぶった拳の空を裂く音がキョウの耳に入ると、甚大な被害を生むであろう一撃への恐怖を嫌でも助長させる。


 そんな必殺の渾身のパンチをレナが放った場所はキョウの予想を裏切り、宣言通りの腹であった。

 下から突き上げるように打たれた拳は、まるで隕石が直撃したかのような衝撃と痛みをキョウに与えた。


「ガハッッ!!!グ…ギ……そ…その…まま……腹…を…狙うん……かい……。」

 

 キョウは思わず関西弁で最後のツッコミを入れると、血を吹き出しながら高く高く空中へと放物線を描くように吹き飛ばされていく。

 そしてキョウはドサリと地面に落ちてピクリとも動かない。


 完璧なクリーンヒットでキョウをKOした手応えを感じたレナは、額の汗を拭いながら勝ち誇った表情になる。


「ニャ?だからお腹だよって教えてあげたのに。レナの本気のパンチを顔に当てたら死んじゃうでしょ!」


 ギリギリの所でなんとかキョウに打ち勝ったレナであったが、受けた傷と流した血の量が多過ぎたのか、その場でストンとへたり込んでしまう。


「ニャニャ〜…レナが勝ったけど…しばらくは動けそうにないや…。強かったな〜この狐さん。

すぐにネネの所に向かいたいけど…。ネネ…大丈夫かな…。」


 薄っすらとレナの頭の中に最悪なパターンがよぎる。どうか無事でいてほしいというレナの願いは空の彼方へと無情にも消えていくのであった。

 だが、レナの願いはネネの想いを受け継いだラヴィがしっかりと応えてくれる事だろう。


 座りながら意識が朦朧とするレナの向こうで、気を失っているキョウの体から幻惑の力が黒い光となって現れ、悪の宝玉を目指すため空へと飛んでいった。



――そして少し時は戻り、レナとキョウが戦い始めていた頃、もう一つ激戦が行われている場所がある。その場所では、口から血を流しながら膝をついているアヤネと、その横を通り過ぎようとしているヨルカの姿があった。


 アヤネは自分を無視するかのように歩いていくヨルカのチャイナドレスの裾を掴む。


「おい!どこ行くんだよ!うちはまだ負けてねーぞ!」


「はぁ…もういいアルよ。お前じゃ私に勝てないアル。それにお前の目的は晩餐会の会場アルよね?勝手に行けば良いアル。」


「どういう事だ!?」


「もうネネは死んでるアルよ。私達からの攻撃をあれだけ受けて生きてる方が不思議アル。」


 ヨルカの語るネネの状況にアヤネの心に動揺が走る。


「ママがそんな簡単に死ぬわけねーだろ!適当な事言ってんじゃねーよ!」


「手加減してたけど、こんなにしつこいなら殺すしかないアルか…。」


 すると、突然アヤネの顔面に強烈な痛みが走る。それはヨルカの蹴りがアヤネの顔を蹴り上げたためだったが、アヤネはそれに一切反応できないどころか蹴られるまで自分が何をされたのかさえ分かっていなかった。


(これだ…!さっきからこいつの攻撃が全く読めない…!いや、それどころか意識すらできないんだ…!)


 たった一発の蹴りで道路の反対側まで吹き飛ばされたアヤネだったが、ヨロヨロとしながらもまだ立ち上がる。

 それを見ていたヨルカが面倒臭そうに一本足で立って構える。

 アヤネの目には、ヨルカが構えた瞬間から彼女の姿がスーッと薄く消えていくように見えている。


(またかよ…。あいつが構えを取ると姿さえ認識できなくなってしまう…。気配さえも感じない。どういうカラクリ―)


ズドンッッッ!!!


「ガハッ!!!」


 アヤネがヨルカの使う不思議な技の突破口を考えている途中で、また予期せぬ方向からヨルカの掌底がアヤネの背中に命中する。

 その掌底の威力により、アヤネの肋骨がボキボキと音を立てて数本折れてしまった。


「あれ?背骨ごとグチャグチャにするつもりだったのに…その白いオーラが邪魔したアルか。」


「ゲホッ!ゲホッ!くっそ…!」


「なんで私の攻撃が意識できないか分からないって顔してるアルね。種明かししてもどうにもならないし教えてあげるアル。

私が扱っているのは『天誅の力』アル。天からの突然の罰、そんなもの人間が意識できるわけ無いアル。私は前いた世界でこの力を手に入れたアル。」


「なんだよその反則みたいな力…。いや…でもてめぇの攻撃をラヴィは受け止めてたじゃねーか…。」


「あいつやネネが異常なだけアル。勇者や英雄と言われる人間はある意味神に近い存在なのかもしれないアル。

でも私が本気で天誅の力を使えばあいつらも今のお前みたいに反応などできないアル。」


「ならうちも高みに昇れば良いだけじゃねーか。」


「無理アル。なぜならお前のオーラはまだ白色だから。」


「知ってるよ。うちの故郷でもみんな白から青や赤に変わってたからな。」


「お前、才能ないんじゃないアルか?」


「うるせぇよてめぇ!!!」


 ヨルカからの下に見られた発言にアヤネの怒りは頂点に達する。アヤネは白いオーラを限界まで広げると、そのまま踏み込んでヨルカとの距離を詰めようとする。

 だが、ヨルカは瞬時に天誅の力で気配を消してアヤネの攻撃をなんなく躱す。


「オーラの量だけはバカげたレベルアルな。まぁそんなものは私の力には無に等しいアル…。」


 ヨルカの声が聞こえたと思った次の瞬間には、挿脚そうきゃくと呼ばれるつま先を差し込むような蹴りが胸に打ち込まれてアヤネは吹き飛ばされる。


 無意識からの一撃は、ガードどころか攻撃を受ける心構えさえできていないアヤネにとてつもないダメージを与えてくる。


「グ…ハッ…!!」


「うーん、そのオーラが邪魔アルね。かなりダメージが軽減されてるアルな。」


「これ…で…軽減かよ…。」


 両手両膝をついてなんとか立ち上がろうとするアヤネは、今蹴られた所に左手の手のひらを当てる。

 すると、手から発せられた白いオーラがその場所の内部の傷を包み込んで治療しているようだった。


「治療してるアルか?器用な事をするアルな。」


内気功ないきこう…。気を内側の傷に集中させて治癒力を極限まで高める…。てめぇの攻撃なんざ屁でもねーんだよ!」


「あーもう!本当に面倒臭い奴アルね!次の一撃で決めるアル!」


 ヨルカが天誅の力でまた消えていくと、アヤネは目を瞑って両腕をダラリと伸ばし、完全に脱力した状態で集中力を高める。


(あいつの力に一矢報いるにはこの方法しかない…!肉を切らせて骨を断つ…こんな博打みたいな方法しか残されていない…!)


 そして無防備なアヤネに、勝負を決めに来たヨルカの双掌の一撃が牙を剥く。

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