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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第二章 嵐の前の静けさ編
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第21話 勇者と感謝!

――10年前、たくさんのコンカフェが争いあった『一本橋の乱』を私が先頭に立って治めてから5年が経っていました。その頃はオタックロードに移転したどり〜むは〜とも軌道に乗って落ち着いていた頃でしたね。

 何事もなく平和な日常を送っていたのですが、ある噂を耳にしたのです。『一本橋で盗難などが多発している』と。

 その犯人を追っても人間離れした動きで逃げられてしまうみたいで、異世界から来た私はそれを聞いてピンときたのです。同じ異世界から来た者がこの街の何処かにいる。


 それからしばらく私は店が終わればその者を探すために一本橋を巡回しました。そして見つけたのです。路地裏でうずくまっているボロボロのアヤネを…。噂で女っていうのは分かっていたのですが、まさか10歳ぐらいの女の子だとは思いませんでした。そして私は声を掛けたのです。


「こんばんは!最近この辺で悪さをしているのはあなたかしら?」


 そしたら何も言わずにアヤネは私に襲いかかってきました。予想通りこちらの世界では考えられない力でした。ですから、仕方なく私もまずは力で押さえつけたのです。


「コラコラ、まずは人の話を聞きなさい。どこから来たの?」


「離せ!殺すぞ!」


「女の子なのにそんな物騒な言葉遣いはダメですよ!もしかして…違う世界から来たの?」


「え?」


「私もなのよ。とりあえず落ち着いて話を聞かせてくれるかな?」


 アヤネは私が同じ境遇だと知ると大人しくなったので、こちらの世界へ来た経緯を聞く事ができました。

 アヤネの元いた世界は、年中戦が絶えない世界だったみたいで…その戦争の渦中にあった『武の国』という所の生まれだと話してくれました。

 戦は酷くなる一方で、子供達も前線に送られるような事態になり、アヤネもその1人として戦に参加したようです。

 しかし、子供の力でどうにかなるものではなく、前線の阿鼻叫喚の中、アヤネも敵国の兵士に殺されそうになりました。


「殺される…その瞬間…目を閉じたんだ…。でも、何も起きないからゆっくり目を開けたらこの世界に…居た…。」


「そうだったのね…。それでどうしたら良いか分からないから悪さを…。」


「…………。」


 そこで私は自分と同じ境遇のアヤネの事を不憫に思い、養子として迎える事に決めたのです。

 それからしばらくして、アヤネはお店を手伝ってくれるようになり、今では『メイド修行に行ってくる』って言って違う地域のメイドカフェで働いたりしてくれてるんです。



――こうしてネネとアヤネの過去の話が終わり、何も言わずに聞いていたセリーナが重い口を開く。


「そういうことじゃったか…極稀に異世界同士のほころびに次元の亀裂が入るのは知っておったが、わしの世界ではそんな事起きんかったからの…。疑って悪かった…。」


「それは女神様が世界をちゃんと管理していたからでしょう。」


「神が世界を放棄する事案が増えておるようじゃな。由々しき事態じゃ。それでお主はどうやってこの世界でそこまで暮らせるようになった?」


「私は運良くヤオ様に見つけていただいたのです。こうやって幸せな人生を歩めているのもあの方が何かと目を掛けてくれているからですね!」


「そういう事か。あやつめ、わしには教えておいても良かったろうに!」


「それもそうですよね。何でお教えにならなかったのでしょうか…。」


「まぁ良い!それで、まだ他に異世界からこちらに来た者達はおるのか?」


「どり〜むは〜とには4人在籍中です。私が見つけられた子達はちゃんと保護するようにしているんです。他は…一本橋や五右衛門町でも増えてきているとは聞いていますが…。」


「なるほどの〜。だからすんなりラヴィを受け入れた事にも合点がいったわ。店の子らもあのアホ勇者をあまり疑問に思ってなさそうだったしの!」


「当然大半が普通の子達ですが、そこはオタクパワーですかね!ちゃんとラヴィちゃんには言ったんですよ!『ワケあり』の子達が多いって♪」


 ネネからの情報でセリーナの中の疑問はあらかた片付いたのだが、逆に大きな謎が生まれたのも確かだった。


(ふむ…次元の亀裂に飲まれた人間が世界間を移動するのは極稀なはず…それこそ数百年単位に一度ぐらいであろう…。それがネネの話によるとここ10年で多発しておる。しかもこの界隈に集中するなどあり得ん。これも悪神の影響なのか…。ならば10年以上前から悪神が潜んでいた…?)


「どう…なさいましたか?」


「いや!なんでもない!後でヤオに説教してやろうと思うてな!」


「うふふ♪そうですか。では、女神様も一緒にお店に帰ってラヴィちゃん達の様子でも見ましょう!」


「そうじゃな!あやつらがまた喧嘩でもしてようものならボコボコじゃ!」


 そしてネネとセリーナは帰路へと就く。その間、セリーナは歩きながら1人で考え事をしていた。


(このままラヴィをあの店に置いておくのは大丈夫なのか…。異世界からの者が大勢いるのであれば、さっきのようにまた力を暴走させるかもしれん…。そんな事になれば…あやつの様子を見て連れ戻す事も考えねばならんな…。)


 セリーナが密かにそんな事を考えている間に2人は店の前に着いた。お店の玄関ではご主人様を見送るメイドの姿が見える。


「あらあら!丁度最後のご主人様が帰られた所かしら!ではどうぞ、女神様!」


 ネネにそう言われて店の中に入ると、みんな閉店作業を始めている。その中からバタバタと走りながらラヴィが近付いてくる。そして、セリーナに耳打ちをしてきた。


「女神様…大丈夫だったのですか…?」


「大丈夫じゃ。詳しい事はまた話す。」


 ラヴィとセリーナがコソコソしていると、それに気付いた者が黄色い声を上げる。


「キャーーー!セリーナちゃん来てたのー!?相変わらずお人形さんみたいで可愛いー!!」


 その声を聞いてどんどんとセリーナの周りに人が集まってくる。こんなメイドに囲まれるなど、男からしたら夢のようだろう。

 そうやってセリーナがもみくちゃにされていると、ラヴィがなにやらネネにプレゼントを渡しているようだった。


「ネネよ。こんな私を受け入れ、そして助けてくれている事に感謝している。これはほんの気持ちだ。初めての給料で必ず何かお礼をと思っていたのだ。」


「あらあらー!気を遣わなくてもいいのに!でもありがとうね〜。中身は何かしら?」


 ネネが満面の笑みで綺麗に包装された袋を開けると、そこにはメイドが付けるヘッドドレスが入っていた。


「あらー!可愛い!ありがとうね!ラヴィちゃん!」


「喜んでもらえてるなら私も安心した。そうだ!みんなにもあるぞ!ケーキを買ってきた!」


 ラヴィは冷蔵庫からケーキを出してテーブルに並べると、仲間のみんなは『ありがとー!』と言い仲良く食べ始める。

 アヤネは悔しいのか、離れた場所で腕を組んで輪に入ろうとしなかったが、ルルに手を引かれてテーブルに着いた。そんなアヤネにドヤ顔でラヴィがケーキを渡すものだからまた喧嘩が始まりそうになる。

 だが先程と違うのは、そんな2人を見て周りのみんなは笑顔になっているようだった。


 そんな様子を見ていたネネから光が現れてラヴィの宝玉へと吸い込まれる。


【善の力を手に入れました。 種類は慈愛。】


 宝玉の声が聞こえるセリーナは、その手に入れた善の力の種類を聞いてゆっくり優しく微笑むと、誰にも気付かれないようにお店を後にした。


(どうやらわしの考え過ぎだったようじゃな…。あんな家族みたいに仲間に囲まれ、そして自分の意思で仲間に感謝を形として表す。前の世界のラヴィでは考えられん事じゃったが…もうしばらくネネにラヴィをお願いしようかの。)


 そして、セリーナの去った後、どり〜むは〜とからは幸せな笑い声がもうしばらく続くのだった。

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