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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第二章 嵐の前の静けさ編
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第16話 勇者と魔王と神々の秘密

 軍人もビックリなほど綺麗に気を付けをして立つラヴィ、グチャグチャの魔王、両手を腰に当てて偉そうな幼女の女神。この異様な空気の中、セリーナはラヴィ達にあの件について説明を始めた。


「まずは二人共!『善の力』集めご苦労じゃの!ふむ、意外とアルマが多く集めておるようじゃが…ラヴィがやけに少ないのー。なんかきったない色の愛をようけ集めとるみたいじゃが。」


「ひっ!!す!すいません!!自分!不器用なもんで!」


「お主…何故そんなにも怯えておるのじゃ?」


 ラヴィは自分の横の、もはや魔王とは呼べないピクピクと動く肉塊をチラリと見る。


「ガハハ!ラヴィよ安心せい!アルマには少しヤキをいれただけじゃ!お主にはそんな事はせん!」


「そ…そうですか…。それなら良かったです…。」


「調子に乗らんかったら…という話じゃがの。」


「ひーっ!頑張りますぅぅ!!」


 ラヴィは、女神から放たれる獣のような鋭い眼光に漏らしそうになる。

 そんな会話をしていると、横の肉塊が『ゴキ…グチャ…ベチャ…バキッ…グチュグチュ…ボゴ…』と音を立てて段々と人の形に戻っていく。


「気持ち悪っ!!!!!」


 そのグロい光景にラヴィがドン引きしていると、そのまま肉塊がアルマの姿に戻る。


「チッ…死ぬかと思ったぞ!クソバ…女神め!」


「クソバ…?」


「美しく麗しい女神様。です。ごめんなさい。」


「ふむ、よろしい。それにお主がそれぐらいで死ぬならラヴィは苦労しておらんわ。」


「で何用なのだ!?急に我をこんな所に呼び出して!我が光に飲み込まれる瞬間を見た白石の顔が忘れられん!」


 アルマの心配をよそに白石は、アルマが突然消えた事に歓喜していたのだがそれは置いておこう。

 セリーナは改めて深刻そうな語り口調で話す。


「実はの、この近辺に悪神が紛れ込んでおるみたいなんじゃ。」


「悪神…、それは一体何者なのでしょうか?」


「簡単に言えば神から堕ちた者じゃな。わしら神は自分の受け持つ世界を1つ創る事が許されておる。それは様々な世界が存在しておってな。所謂『異世界』と言われるものじゃ。その創った世界が滅んでしまい、力を得る事ができなくなってしまった神は悪に堕ちる。そういった悪神は自分の存在を維持するために他の世界を襲い、力を奪おうとしよる。」


「壮大過ぎて私には理解ができませんね…。」


「そりゃそうじゃろうな、詳しい事はいずれお主達にも話さなければならんのだが…。『力がなければわしら神は堕ちて悪しき神に変貌する』という事だけ分かってもらえたら良いわ。」


「その力が我らに集めさせている『善の力』というわけか?」


「うむ、そういう事じゃ。そして最近、この地球に多くの神が目をつけておる。その中でもこの一本橋周辺は『善の力』を集めるのに最適と評判での。この地球を担当しておるわしの親友も困っておるところなのじゃ。」


「くだらんな。何故この街が特別なのだ?他でいくらでも集められるのではないのか?」


「お主ら、やたらと『勇者だ!』『魔王だ!』と言いまくっておるようじゃが、この地球には創作の中でしかそんなもんは存在せん。普通ならそんな頭のおかしい奴を放っておかんが、何か怪しまれたりしたか?」


 ラヴィとアルマは記憶を探るが、言われてみれば生活に支障など出ていなかった。


「いえ…そう言われると何もないですね。みんな怪しんだり距離を取ったりせず仲良くしてくれています。」


「そうじゃろう。それは何故かと言うとな、この街の人間達は『オタク』と呼ばれる種族が多い。オタクは架空の物などに耐性を持っていての、基本的には不思議な事も寛容に受け入れよる。むしろ異世界ウェルカムのような感じでな。こんな土地は宇宙広しといえどここにしか存在せん!そういった理由で、他の世界の神々からしても格好の狩場として見られておるのじゃ。」


「我の領域の五右衛門町にはそんなオタクのような者はおらんぞ。」


「五右衛門町は元々頭のおかしい奴らが集まる危険な場所じゃし、頭のおかしいお主はよく馴染んでおるという事じゃろ。まぁ五右衛門町は良きも悪きも全てを受け入れる良い街じゃぞ。」


「なんか納得できんぞ…。」


 セリーナはある程度事情を説明し終わると、肝心の本題に話を移す。


「でじゃ!情報によるとお主らの近辺で悪神が動いておるみたいでな。悪いがお主らにその悪神の討伐をお願いしたいんじゃ。」


「我らが戦わんでも貴様達神が動けば良い話だろう!」


 アルマのその主張にラヴィも同意見なのか、隣でコクコクと頷いている。


「何故わしがこんな幼女の姿をしておると思う?」


「可愛いからです!それしかあり得ません!ずっとそのままでいて欲しいくらいです!た…食べたい…しゃぶりたい…。」


 ラヴィが老人口調の幼女萌えの属性に目覚めかけている。


「違うわ!力を限界まで抑えるとこうなってしまうんじゃ!神の力は絶大が故に1つの世界に神は一柱しか存在できん!世界が崩壊してしまう恐れがあるからの!だから親友も力を抑えて男児の見た目をしておる。そんな力を抑えたわしらでは悪神と戦う事はできんのじゃ。だからお主らにお願いしておる。」


「私達なら悪神に勝てるというのですか?」


「無理じゃ。今のままではの。だから悪神が動き出すまでに『善の力』をできるだけたくさん集めるのじゃ!今悪神に対抗するにはその手段しかない。強大な善の力を纏ったお主らなら…。」


「分かりました!お任せください!勇者としてこの世界を守ってみせます!」


「くだらんな。魔王が善の力で戦うだと?ふざけるな!」


 前向きなラヴィとは反対に、アルマは否定の態度を見せる。

 そんなアルマに対してツカツカと近付いていくセリーナ。


「ふむふむ、そうかそうか…。」


「ぐっ!脅しや暴力では屈しはせんぞ!!」


「そうではない。ではな…悪神を倒した時、お主らが何故『勇者』と『魔王』なのか…その真実を話してやろう。どうじゃ?」


「真実…だと…。」


「うむ、どちらにせよその時には全てを話さんといかんしの…。やってくれるか?」


 アルマはセリーナの申し出に長考する。隣でラヴィも少し戸惑っているようだった。

 その真実を知ればどうなるのか、今までの勇者と魔王の関係でいられるのか…。

 アルマは心の片隅に一抹の不安を残しながらも、その真実を知る事に意味があると感じた。


「フハハハ!良いだろう!その真実とやらを知るために協力してやろうではないか!人というのも面白いと感じてきたからな!」


「私もです!この世界に来て…人々と交流していると何か勇者として大事な事が分かりかけてきた所ですから!」


「嬉しい返事じゃのー。お主らをこの世界に転移させて良かったわい。自分達に足りなかったものが分かってきたみたいじゃな。」


 ラヴィとアルマの成長した勇ましい姿に、セリーナは少し目が潤んでいるように見えた。

 そしてセリーナは、改めて2人に檄を飛ばす。


「では頼んだぞ!勇者ラヴィ!魔王アルマ!この世界を救ってみせよ!!」


「はい!!」「任せよ!!」


 こうして、悪神との決戦のために『善の力』を集める日常へとラヴィとアルマは戻るのであった。

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