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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第二章 嵐の前の静けさ編
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第15話 勇者と魔王と荒ぶる女神

「さぁ!どうした!私に伝えたい事があるのではないのか!?」


 メイドカフェ『どり〜むは〜と』にラヴィの大声が響き渡る。何事かとそちらに注目を集めるメイドやご主人様、その視線の先には腰に手を当てた偉そうな態度のラヴィと、ハンカチで顔の汗を拭きながら困り顔のハゲたおじさんが居た。


武夫たけおよ!男がウジウジするんじゃない!いつも私の顔を眺めて何か言いたげな表情をしているではないか!男らしく何でもハッキリ言えばいいのだ!」


「い…いや…でもこんなみんなが見てる前で…。それに…この気持ちをラヴィたんに伝えるのは…怖くて…。」


「怖くなどないぞ!武夫よ!私は勇者だ!なんでも受け入れてやる!だから…」


 ラヴィは、厳しい態度から一変して優しい表情で武夫の前に顔を近付ける。


「勇気を出すのだ…武夫よ…。」


 その飴と鞭のような連撃にキュン死しそうなほど顔を真っ赤にする武夫は、ギュッと拳を握ると勇気を出してラヴィに気持ちを伝える。


「ラ!ラヴィたん!!だっ!大好きでしゅ!!結婚して下さい!!」


「私はお前の事が好かん!!ハゲだから!!」


 鞭からの飴からの一刀両断に武夫は死んだ。これを見ていたご主人様達は、武夫の頭から魂が抜けていくのが見えたと後に語る。

 そこに、キッチンでご飯を作っていたルルが慌ててラヴィ達の所へやって来る。


「ラヴィちゃん何してんの!?あれだけしつこく言わせておいてぶった斬るとかおかしいって!」


「ルルよ。武夫は死んだ。騒ぐんじゃない。」


「なんで悲しげな表情でそんなセリフ言えんの!?ラヴィちゃんが殺したんでしょ!って武夫さんは死んでないけど!…いや…真っ白になって動かないな…ある意味死んでるのか…。」


 最近のどり〜むは〜とでは、ラヴィを中心とした騒ぎが名物となり、今も他のご主人様やメイドは笑いながらパチパチと拍手を送る。武夫本人も心なしか幸せそうな顔になってきているようだった。

 こうやって知らず知らずのうちに、ラヴィはドMご主人様達から絶大な人気を得始めていた。


 そして客足も落ち着き始める時間帯になり、休憩中のラヴィがルルからスマホの使い方を学んでいると店のドアが開く。

 『おかえりなさいませ。』と出迎えに行ったメイドは、その来店者を見て歓喜の声を上げる。


「か…可愛いーー!!!」


 その騒がしい声を聞いたラヴィが、バックヤードから店内へと顔を出す。すると入り口には、大きなピンクのリボンで白銀の髪を束ねた可愛らしい幼い女の子が立っていた。

 その女の子はラヴィの顔を見つけると、パタパタとそちらへ走って向かっていく。


「ママーーー!!!」


「「「「マ…ママ!?!?!?」」」」


 幼い女の子の爆弾発言に周りの人達は驚きを隠せずにいる。ショックでガタガタと震えながら泡を吹くご主人様もいるほどだ。


「お…おい!私はお前などを産んだ覚えはないぞ!それに私は処女だ!!」


 ラヴィの処女発言に泡吹きご主人様は息を吹き返す。この発言には他のご主人様もニッコリであった。

 そして女の子はラヴィの横に着くと、その手を握り、みんなへお辞儀をして自己紹介を始めた。


「えへへ!ごめんなさい!ママっていうのは冗談です!私はラヴィお姉ちゃんの妹のセリーナって言います!よろしくお願いします!」


 ハキハキと律儀に自己紹介をする可愛い女の子を見て、メイドもご主人様もトロけるような顔になっていく。

 隣にいるラヴィは、妹という存在も身に覚えがないのでまた拒絶の態度を示す。


「おい、私に妹など…」


「黙れラヴィよ。わしじゃ。女神じゃ。というか一目見ただけで普通は気づくじゃろうが。バカ勇者が。」


 女の子が女神だと気付かない鈍感なラヴィに、セリーナはボソボソとラヴィにだけ聞こえる声で正体を明かす。


「め…女神様!?」


「声が大きいぞ。店が閉店した後で良いから、誰にも見られていない場所で宝玉を握るのじゃ。分かったな?」


 セリーナはそれだけラヴィに伝えると、さっと離れてまたパタパタと店の出口へと走り出す。


「じゃあね!お姉ちゃん!お仕事頑張ってねー!!」


 とセリーナは言い残して店から出ていくのであった。店に居た人達は、激カワ姉妹の爆誕に大いに盛り上がっている。

 だが、ラヴィだけは浮かない顔で少しガタガタと震えているようだった。


(やばい…絶対怒られる…だって『善の力』は結局全然溜めれてないもん…。)


 特殊なドMご主人様という希少種からしか『善の力』を集められていないラヴィは、力集めに苦労していたのだ。



 そしてどり〜むは〜と閉店後、ラヴィはセリーナに言われた通り2階の自室で宝玉をギュッと握ると、宝玉が光りだしてそのままラヴィを包みこむ。

 眩しい光に目を閉じてしまっていたラヴィは、光が収まるのを感じるとゆっくり目を開ける。

 そこはさっきまでいた自室ではなく、どこかの高層ビルの屋上であった。


「テレポートか、宝玉とは便利なものなのだな。」


 ラヴィが宝玉に感心をしていると背後から人の気配がして振り向く。そこにはセリーナが立っていた。


「ラヴィよ、久しぶりじゃのー。元気であったか?」


「げ…元気でした!あの…その…。」


「ん?何か言いたいことがあるなら少し待て。アルマを無理矢理ここに呼び出すのでな。あいつの所にはまだ行っておらんので急にテレポートしたら驚くかのー。」


 セリーナが拓けた場所に手を伸ばすとそこに光の渦が現れ、そこからペッとツバのように吐き出されてアルマが出てきた。

 白石の家でゆっくりくつろいでいたはずのアルマは、突然の出来事に思考が追いついていないようだった。


「なんだ!ここは一体どこだ!ん?そこにおるのはラヴィではないか!それとそのガキは一体何者だ?」


 そんなアルマに無言で鋭いローキックを浴びせる幼女セリーナ。スパーーン!とキレの良い音が空を裂く。


 次に、ガクリと崩れたアルマの腹部に強力なミドルキックを打ち込む。メリメリと音を立てながら深くアルマの体にめり込んでいくセリーナの蹴り。


 それに堪らずガハッと吐血するアルマに、セリーナは追撃で奥義の女神百裂拳をお見舞いする。

 一撃がミサイル並の威力を持つ連打にアルマは吹き飛ばされ、そこからピクリとも動かない。それを見ていたラヴィは、恐怖で白目を剥いてフリーズしていた。

 そしてセリーナは、ボロ雑巾のようになったアルマの胸ぐらを掴む。


「お主…こっちに来てから何度わしの事をババアと呼んだ?たまにクソも付けておったのー…。細切れをご希望か?」


「にゃ…にゃんで…しょの事を…。」


「女神ナメんな。」


「ご…ごべんなぱい…。もう…言いましぇん…。」


 心の底から反省したアルマをラヴィの横へと放り投げた女神は、ある程度スッキリしたのか、返り血を拭わないまま笑顔で2人に話し出した。


「今日はお主らに伝えなければならん事があってな!ちゃんと聞くように!」


「はい!女神様!!」


 セリーナの言葉にラヴィは、女神への忠誠心に満ちた返事をする。なぜか…それは、曲がってはいけない方向に体が折れまくっているアルマを見て『自分はこうなるまい』と心に固く誓ったからであった。

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