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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第八章 掴み取る平和と手放す記憶編
115/116

第115話 勇者と新たな脅威

 一度は、アヤネとレナから大ダメージを受け、ラヴィの巨大なオーラを前に狼狽えていたシャクレンであったが、なんとか心を立て直してオーラを刀に集中させながら立ち上がる。


「少々儂もはしゃぎ過ぎたようじゃな…。いつの間にか他の四大魔王の気配も消えておる。まさかここまで貴様らがやるとは思っていなかったわい…。

じゃが、ただでは終わらんぞ。久々に儂も『斬る』とするかのう…。」


 その異様な立ち姿を見たアヤネが急いでレナに指示を出す。


「レナ!一旦離れろ!こいつ…さっきまでとは全然違う!」


「ニャ!分かってるよ!これは次に斬られたら防げないよ!」


 そして、アヤネとレナが慌ててシャクレンから離れると、シャクレンは目標をラヴィに定めているようで、2人の事は眼中に入っていないようだった。


「ほっほっほっ!『斬った』ではなく…『斬る』のは神以来じゃのう。儂の神斬も喜んどるわい。」


 シャクレンが現れてから初めて両手でしっかりと刀を握って構える。


「さぁ、存分に斬り合おうぞ!」


「私は斬り合うつもりなど毛頭ないぞ!」


 ラヴィは、構えるシャクレンに対し、柱のように放っていたオーラを聖剣に全てまとめる。それにより、聖剣が放つ光が一層強くなり、どんよりとした空や、荒れ果てた大地を蒼に染め上げる。


「剣神とやら!もう終わりにしよう!斬り合わずとも私の一閃だけで終わる!」


「ぬかせ!小童!逆に一振りで斬り伏せてやるわい!」


 ラヴィは聖剣を後ろに振りかぶると、そのまま踏み込んでシャクレンの方へと向かう。

 それを迎え討つように、シャクレンは居合の構えを取り待ち構える。


「うおぉぉぉぉ!!!!!!!」


 ラヴィが走りながら聖剣の力を解放すると、オーラの塊である刀身が荒れ狂う蒼い嵐を纏った。

 その暴風のような蒼いオーラを見たシャクレンは目を丸くして硬直する。


「なっ…!そんなもん刀では無いではないか…!ただの…天災…!」


「さぁ!斬り伏せられるならしてみせろ!剣神!」


 そして、ラヴィが聖剣を振り抜くと、蒼き暴風のような剣撃がシャクレンに襲いかかる。

 なんとかそれを受けようと、シャクレンも渾身の力で刀を抜いたが、ラヴィの剣撃に触れた瞬間、枯れ枝のようにポキリと折れてしまう。


「こ…!これが真の勇者の力だと…!言うのかっ…!剣を極めたと思っておったが、所詮井の中の蛙だったという事か…!無念じゃ…!」


 シャクレンは、積み上げてきたものをラヴィに真っ向から叩き潰されながら、蒼い衝撃に巻き込まれて空高く舞い上がる。

 そして、そのままボロボロになってドサリと地面に落ちると、ピクリとも動かなくなった。


 シャクレンが戦闘不能になった事を確認したラヴィは、聖剣を一度だけ軽く振った後、刀身を消して懐にそれを仕舞った。


「安心しろ。峰打ちだ。」


「「どこがだよ!!」」


 ラヴィの爆風巻き起こす一撃に巻き込まれないように逃げていたアヤネとレナが、ラヴィの『ただ言いたかっただけ発言』に遠くからツッコんだ。


 これにて四大魔王は全員討伐され、ラヴィの所へと他のチームも集まってきた。

 そこに、全ての戦いの様子を見守っていたイリスも到着すると、全員に向けて労いの言葉をかける。


「みなさん、本当にお疲れ様でした。しかし、ここまであっさりと四大魔王を討伐するとは驚きです。私の予想を大きく上回る結果でした。

セリーナ様が、あなた達の事を心から信頼されていた理由が分かりました。」


 そのイリスの言葉に、ラヴィが少し深刻な顔をして返す。


「いや、みんな同じ気持ちだと思うが、あっさりなんて言葉で収まるような相手ではなかったぞ。

誰か1人でも欠けていれば私達が殺されていただろうな。場所がここというのも大きかった。制御などせず思いっ切り力を発揮できたからな。」


「ククク…。貴様らはそうだったかもしれんが、我と瑠偉は楽勝で撃破したぞ!」


「はいはい。凄い凄い。魔王魔王。ヘイヘイ。」


「感情を込めよ!ちっパイ勇者が!」


「で、童貞根暗魔王は後で殺すとして、どうなんだ?これで平和に終わりそうなのか?」


「根暗ではないわ!こんな明るい魔王がどこにおるのだ!」


「どうでしょうか。本来はアルマさんとラヴィさんの『共鳴』の力を証明する試練だったのですが…ベルゼ様は四大魔王であればそこまでラヴィさん達が追い込まれると思っていたみたいで…。」


 イリスが暗い表情でラヴィの質問に答えると、もう一つの懸念される事情を話し出す。


「ベルゼ様の思惑は、四大魔王がラヴィさん達を殺した後、流浪の勇者と呼ばれるヴァーニー・アンバーナイトに事後処理をさせるつもりだったのです。」


「流浪の勇者?ヴァーニー?」


 そこでイリスが分かりやすく全員にヴァーニーについて説明をした。


「そんな勇者が存在していたのか…。」


「はい。こうなったのもヤオ様との戦いで覚醒したアルマさんの魔王の力をヴァーニーが感知したことが始まりです。

そのアルマさんを討伐するために、ヴァーニーが目をつけたと…。」


「ふん!そんな奴返り討ちにしてやるわ!」


「しかし…ヴァーニーにはいくつかの不思議な点や、ある秘密の噂がありまして…。その辺りの事も、たぶん今頃この状況を見ていたであろうセリーナ様とベルゼ様の話し合いが行われているはずです。

その結果次第と言った所でしょうか…。」


 そんな感じで、イリスがこれからについて話していると、割って入るのを申し訳なさそうにしながらネネが質問をする。


「イリスさん、これからも大変な事は分かったのですけど、私達は元の世界にいつ帰れるのでしょうか?」


「事が終わればすぐにでも帰還します。あちらではシルヴィアさんとルルさんが転移の門を維持してくれていますが、長くは保てないと思いますので。」


「それではそれもセリーナ様次第というのですね。」


「はい。今しばらくお待ちを…。」


 力を合わせて四大魔王を退けて、戦勝ムードになりたい所を、新たな脅威の話をされて重い空気が漂う中、神界ではセリーナとベルゼの駆け引きが始まろうとしていた。

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