第11話 魔王、ホストになる!
これは世にも珍しい魔王の面接の会話を記録したものである。
「では面接を始めます。履歴書はお持ちでしょうか?」
「なんだそれは?何かの魔導書の事か?そんな物は我には必要ない。」
「あ…あはは…まぁこの業界では履歴書なしで面接に来る方も多いので…また後で従業員名簿用の書類にでも書いていただければ…。
ではお名前からよろしいでしょうか?」
「貴様から名乗らんか。」
「え…いや…先程白石と名乗りましたが…。」
「そうであったな!虫ケラの名前など覚えておらんかったわ!そして!我が名は魔王アルマ!しかと胸に刻み込んでおくがよい!」
「マオウ・アルマさんと…、変わった名前ですね。ハーフの方でしょうか?ちなみに住所は日本ですか?」
「住所?そんなものはない。この世界全てが我の領域だ。」
「住所不定と…、学歴や職歴などを教えて下さい。」
「学歴?我は生まれながらにして万の知識を宿す者だぞ。学び舎などに行くわけがなかろう。職歴はこの500年ずっと魔王をしておる!」
「そ…そうですか…凄いですね…。では資格などはお持ちですか?」
「暗殺者の事か?それなら暗殺の天才にして闇の眷属であるククルという魔族を部下に持っておるが。」
「刺客じゃないです。資格です。まぁ持ってなさそうですね。」
「何を言うか!!失礼だぞ貴様!!」
「そうでしたか!失礼しました!では何の資格をお持ちで?」
「持ってない。持ったこともない。」
「………。では最後に何かホストになろうと思ったキッカケや、何か自己アピールなどはありますか?」
「この魔王が人間どもと共に働いてやろうと言うのだ。アピールも何もあるわけなかろう。
おっと!魔法だけは使うなよ!反射でお前を塵にしてしまうからな!」
「受かる気ある!?!?!?ねぇ!?何しに来たの!?おちょくりに来たの!?普通初対面の人に向かって虫ケラとか言う!?ってか誰だよククルって!!何だよ闇の眷属って!!そして僕が不機嫌になったら魔法使ってくるかもみたいな設定は何!?使えねーよ!!安心しろ!!
まずは足降ろせ!!その態勢でちょっと遠めのテーブルに両足乗せてソファに座ってたら逆にしんどいだろ!!さっきからプルプルしてんじゃん!!
ってかもう帰って!!!」
普段は温厚過ぎて『仏超えの白石』と周りから呼ばれ、『白石の顔は何度でも。』という名言を残した彼もとうとう爆発してしまった。
そして、溜まっていた言いたい事を吐き出し、ハァハァと息を切らせている白石を不憫に思ったのか、アルマは足をテーブルから降ろして座り直した。
「すまなかったな。面接と言うのは初めてでな。迷惑を掛けた…。」
白石は素直に謝るアルマを見てふと我に返る。
「あ…いえ…こちらこそ言い過ぎました…。すいませんでした…。」
「で、いつから働きに来れば良いのだ?」
「合格ではねーよ!!雰囲気で持っていこうとすんなよ!!」
アルマのせいでギャーギャー白石が騒いでいると、背後から白スーツを着た男と赤いスーツにジャラジャラとアクセサリを付けた男が近付いてきた。
白スーツの方は子供のあどけなさを残したような笑顔が似合う綺麗な顔をしており、赤スーツの方はヤンキー上がりのようなイカつい風貌をしている。
それに気付いた白石は、慌てて立ち上がって深くお辞儀をしながら挨拶をした。
「瑠偉さん!光星さん!おはようございます!」
(コウセイだと!?優愛の言っていた男か!2人いるがどっちだ…。)
「うん!おはよう!あら?面接の邪魔しちゃった?」
白石の挨拶に対して、屈託の無い笑顔で愛想よく答える瑠偉と呼ばれた白スーツの男、それとは違い、光星と呼ばれた赤スーツの男はスマホをイジりながら白石の挨拶を無視する。
光星という名前に反応したアルマは即座に動こうとするが、アルマの邪魔をするかのように瑠偉が立ち塞がる。そして瑠偉は何か気になったのか、アルマをしばらくジッと見つめると、また満面の笑みで話し出した。
「君!凄いカリスマ性に満ちたオーラだね!!ホストの才能あるんじゃない?」
「何者かは知らんが…貴様もなんだ?そのオーラは…いやオーラではないな…これは…」
「アハハ!貴様って言われちゃった!久々に大型新人が入ってきたのかな?よろしくね!じゃあまた後で!」
アルマのセリフを遮り、明るく挨拶を済ませた瑠偉は光星を連れて店の奥へと消えていった。そしてアルマは、優愛との約束を守るために瑠偉と光星について白石に尋ねた。
「あいつらは何者だ?」
「あいつらって…瑠偉さんはこのお店のオーナーであり、売上No.1のカリスマホスト。光星さんは入店してたった1ヶ月で売上No.3にまで昇り詰めた凄い人だよ。
ってか…なんか流れでアルマさんが受かった感じになっちゃったよね…。」
「フハハハ!よろしく頼むぞ!白石!」
「先が思いやられるなぁ…じゃあ今日から体験で働いてみる?」
「もちろんだ!…標的を見つけた事だしな…。」
「ん?最後に何か言った?」
「いや、なんでもない。気にするな。」
アルマはこのまま光星を捕まえようと一瞬思ったが、無理矢理ではまた騒動になってしまうため、営業中に隙を見て捕まえる作戦へと変更した。
しかしそんなアルマをよそに、遠くからアルマを睨みつける光星の姿があった。光星はスマホを取り出しどこかに電話をかける。しばらくして相手が電話に出たのか恐ろしい言葉を相手に伝えた。
「もしもし…優愛は捕まえたか?…そうか…じゃあいつもの場所に後で集合しよう…。」
そして不穏な空気が漂う中、『ペルソナ アルクス』が開店時間を迎える。




