第四十話 演算限界。あるいは「愛のオーバーフロー」
「――警告。世界全体の『背徳指数』が許容値を超過。倫理回路の完全焼失を確認。システム、自己修復を放棄し、全メモリをフリーズへ移行します」
黄金の玉座に鎮座する俺(全能神)の視界が、突如として真っ赤な警告文字で埋め尽くされました。 女神アーステラを家畜へと堕とし、ルナを初期化し、ルカを端末へと作り替えたその過剰な「設定変更」は、この世界の基盤が耐えうる限界をとうに超えていたのです。
「(板助)プロデューサー様……! ダメです、書き換えの連鎖が止まりません! アレンに付与した『神殺しの権能』が、世界そのものを性的に解体し始めています。このままだと、存在の定義そのものが消失します!」
「板助様……体が、ノイズで透けていくわ……。でも、気持ちいいの。世界が壊れる音が、最高の旋律に聞こえる……」
端末化したルカが、黄金の回路を全身で激しく発光させながら、俺の腕の中で崩れ落ちます。彼女の瞳には、もはや俺の管理画面すら映らず、ただ「破壊」という名の快楽だけがリフレインしていました。
「ゼクス! 計算しろ! この崩壊を止める数式はあるか!」
「……無理です、板助様。論理も倫理も、貴方がすべて『快楽』という一つの変数に統合してしまった。……世界は今、絶頂のままフリーズしようとしています……。ああ、なんて……合理的で美しい最期だ……!」
ゼクスは土下座した姿勢のまま、崩壊していく城の床と共に、デジタルな塵となって消え始めました。




