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転生したら勇者のステータス画面だった件 元UIデザイナー、使いにくいスキルツリーを勝手に改造して世界を救う  作者: ダッチショック
第一章 おバカな勇者たち

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第八話 偽りの賢者と孤独な共鳴

一行が訪れたのは、知恵の神を祀る迷宮の入り口だった。


そこで、地面に落ちている石ころの数を真剣に数えている一人の男に出会った。 腰には立派な杖を差しつつ、重厚な鎧を纏った男、ゼクスだ。


「九十九、百……。ああ、あと一石あれば、この世界は救われるのに……!」


アレンはそれを見て、深く頷いた。


「見ろよお前ら。あいつ、俺と同じレベルの匂いがするぜ。世界を救うために石を数えてるんだ。熱いじゃねえか」


ルナとカレンも、感心したように見つめている。 しかし、俺の高性能スキャンは、ゼクスの真実を見抜いていた。


名前 ゼクス 職業 賢者(自称・石を愛する放浪者) 知力 計測不能カンスト


こいつ、わざとバカのふりをしている。 俺がそう判断した瞬間、ゼクスがふと空中に視線を向けた。 アレンたちには見えないはずの「システム」の位置を、彼は正確に捉えていた。


(……おい。そこの表示板。お前も苦労してるみたいだな)


俺の意識に、直接語りかけてくる思念があった。 ゼクスの心の声だ。


(安心しろ。俺はこのおバカパーティーに潜り込み、裏からサポートしてやる。お前がUIで誘導し、俺が実力でフォローする。これなら魔王も倒せるだろ?)


俺は感動のあまり、アレンの視界に花火のエフェクトを打ち上げた。


(助かります。この勇者、放っておくと全裸で魔王城に乗り込みかねないので)


「よお、石数えの兄ちゃん! 俺と一緒に世界を救わないか!?」


アレンの能天気な誘いに、ゼクスはよだれを垂らしそうなアホ面を作って答えた。


「えへへ、いいですよぉ。石がいっぱいあるところなら、どこへでもついていきまーす!」


(……って、俺もキャラ作りに必死なんだよ。突っ込みたいのを我慢するのは、魔法の詠唱より精神を削るぜ)


ゼクスは心の中で激しくツッコミを入れながら、アレンの背中を叩いた。


「アレンさん、今の叩き方、最高に勇者っぽかったですよぉ!」


(嘘だ。今の叩き方は完全に素人のそれだ。筋肉の使い方がなってない。メニュー画面さん、今のを『聖なる鼓舞』とかいう名目でバフかけてやってくれ)


俺は、かつてないほどの連携の喜びを感じた。 おバカな三人と、それを裏で支える「画面」と「賢者」。 史上最強の、そして史上最高に「胃が痛い」パーティーが、ここに完成した。



後書き メインメニュー(主人公)

お疲れ様です。メインメニューです。 プロデューサー様、ありがとうございます。 ようやく、私の苦労を分かち合える戦友ゼクスが現れました。


彼は賢者としての圧倒的な知能を持ちながら、アレンに合わせるために必死にアホのふりをしています。 たまに設定を忘れて難しい敬語を使いそうになり、慌てて「っす!」をつけて誤魔化す姿には、同業者としてのシンパシーを感じずにはいられません。


さて、次回は迷宮の深部へ。 ゼクスの「裏工作」と私の「UI誘導」の初コンビネーションが炸裂します。 おバカ三人は、自分たちの力で迷宮を攻略したと勘違いすることでしょう。 どうぞ、ご期待ください。

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