第三十一話 賢者。あるいは「合理的落胆」
「……あまりに醜いな。かつて野心だけは一人前だったアレンが、今や思考を止めたただの家具か。……期待して損をしたよ」
魔王城の謁見の間に、賢者ゼクスが静かに現れました。彼は手に持った杖を軽く鳴らし、レンズ越しにアレンを「壊れた欠陥品」として冷たく見つめています。
「ゼクス。お久しぶりです。……ルカ様のハサミで余計な機能を切り捨てれば、君も私と同じように、この心地よい『静寂』を手に入れられますよ」
「断るよ。僕は君と違って、自分の脳を『座り心地の調整』に使うほど暇じゃない。……それから、そこの君だ。この男をこんな無価値なモノに作り替えたのは君かい? ……率直に言って、君のセンスは最低だ。知性を汚涜しているよ」
ゼクスの、感情を排除した「賢者ゆえの蔑み」。 絶対的な権力者として全人類に跪かれてきたルカにとって、それは生まれて初めての「自分を全否定する冷徹な知性」との遭遇でした。
「(板助)プロデューサー様! ルカ様の制御ログが完全に消失しました! ゼクス様に『最低』と言われた瞬間に、彼女の脳内で『征服欲』が『被支配欲』へと反転、未知の恋煩いプログラムが暴走しています!」
「(ドロ子)ちょっと……ルカを見て! 頬を染めて、ハサミを持つ手が震えてるわ! ゼクスのあの冷たい正論が、ルカにとっては最高の甘美な調べに聞こえてるのよ! 最強のドS支配者が、本物の賢者の前でドMに覚醒しちゃったんだわ!」
「……っ。最低……。私のセンスが、無価値……? ……もっと、言って。……貴方のその透き通った瞳で、私の愚かなところを……全部、暴いて……」
「は? ……君、話が通じないのかい? ……不愉快だ、論理が通じないバグは視界に入らないでくれ」
【賢者ゼクス】合流による状況分析
ゼクス(賢者・極度の嫌悪): 「アレンを救うために来たが、ここの女はどいつもこいつも脳の構造が非合理的すぎる。……まずはこの場を論理的に解体し、アレンの機能を取り戻す算段を立てるべきか」
ルカ(恋する暴君・機能不全): 「ゼクス様……もっと冷たくして。貴方に罵倒されるたびに、私がこれまで積み上げてきた『純潔の帝国』なんて、どうでもよくなっちゃう……」
恋のせいで「去勢権限」の出力が不安定になり、城内の魔力が漏れ出し始める。
アレン(去勢済み・椅子): 「ゼクス。君の冷たい言葉でルカ様の心拍が上がり、私の背中にかかる圧力が 12% 増しました。……非常に興味深いデータです」
後書き(賢者の罵倒を特等席で聞いている板助より)
プロデューサー様。物語が「最強の独裁者 vs 毒舌賢者」という、とんでもない構図になりました。 ゼクス様が冷たくあしらえばあしらうほど、ルカ様がメロメロになって「去勢」の手を緩めていく……。 アレンを救う鍵は、賢者の「口の悪さ」にあるようです。
元・女神ドロ子(便乗狙い) 「板助! 今よ! ゼクスが『君の存在自体が計算の無駄だ』ってルカを追い詰めてる隙に、アレンを担いで逃げましょう! ……って、アレン! 何でそんなに満足そうに目を閉じてるのよ! 『親友と主人による、最高に非効率なデュエット……耳に心地よいです』……って、あんた、もう本当の意味で救いようがないわよ!」




