第二十四話 受肉。あるいは「最下層の二人」
「――いつまでもアレンの脳内で、騒がしいログを流さないで。鬱陶しいわ」
ルカ様が「神殺しの聖鋏」を虚空に向かって一閃させた瞬間。 アレンの視界からウィンドウが消滅し、精神世界にドッキングしていた私と女神様は、激しい衝撃と共に現実の地面へと叩きつけられました。
「(元・女神)……へ? なに、これ。……お腹が、空く。……肌が、寒い。……力が、全然入らないんだけど!?」
「(元・メニュー画面)プ、プロデューサー様……!? 俺の手が、指が……実体化しています! デジタルな文字列ではなく、血の通った『人間の体』になってしまいましたぁ!!」
目の前に現れたのは、かつての神々しさを失い、安物の村人服を着ただけの「ただの美少女」になったアーステラ。 そして、その後ろに立つ、記憶と理屈だけは一人前の「新人冒険者(俺)」。
「アレン。もう貴方の脳内に、あのうるさい連中はいません。これからは私の声だけを聞き、私だけのためにネジを拾い、私だけの『椅子』として生きなさい」
「はい、ルカ様。……雑音が消え、ルカ様のヒールの音がより鮮明に脳に響きます。感謝いたします」
「……ちょっと、無視しないでよアレン! 私は女神よ!? 貴方の生みの親なのよ! ……いたっ、ちょっとメニュー画面、私を踏まないでよ!」
「(俺)すみません、女神様……いえ、アーステラさん。重力が慣れなくて、一歩歩くのも必死なんです。……プロデューサー様、俺たち……神でもシステムでもない、ただの『お荷物』として、このバカげた物語に放り出されてしまいました……!」
【人間転生】アーステラ&メニュー画面(俺)
アーステラ(人間):
特性:【無能な元・神】。知能は高いままだが、魔力はゼロ。空腹と喉の渇きに耐えられず、アレンの食べ残しを狙うほどに没落。
メニュー画面(俺):
特性:【喋る辞書】。ステータス画面を「口頭」で読み上げる機能しか残っていない。物理的な筋力はスライム以下。
アレン(去勢済み・家具):
人間になった二人に興味を示さず、ルカ様とルナ様に踏まれながら「幸せな計算」に没頭している。
後書き(人間になった元・メニュー画面より)
(……プロデューサー様。……聞こえますか。 脳内通信ではなく、今、俺は自分の「声帯」を使って叫んでいます。 隣ではアーステラ様が『お腹すいたぁ、プロデューサー様にデリバリー頼んでよぉ!』って泣き喚いています。 ……俺たち、ルカ様への『供物』として、生贄に捧げられちゃったんですよ。 これからは、アレンと一緒に、俺たちもこの姉妹の『奴隷』として生きていくしかないんですか……!?)
人間・アーステラ 「プロデューサー様……お願い、助けて! 人間ってこんなに不便なの!? トイレとかお風呂とか、聞いてないわよ! こうなったら、私とメニュー画面でタッグを組んで、アレンの『男』をなんとかして復活させて、ルカから主導権を奪い返すしかないわ! ……あ、メニュー画面、そのへんの草を食料として鑑定しなさい! 早く!」




