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転生したら勇者のステータス画面だった件 元UIデザイナー、使いにくいスキルツリーを勝手に改造して世界を救う  作者: 沼口ちるの
第二章 再動、メニュー画面の律動

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第九話 普遍。あるいは「変わらぬ業」の証明

「……あ。……あ、あああああああ!!!」


王都の門の前。知能が正常値へとパッチされた瞬間、アレンは己の頭を抱えて絶叫しました。 IQ185の超天才時代に「物理演算的に効率が良い」と称して戦車に頭をこすりつけ、IQ35時代に「キラキラした歯ブラシだ!」と叫んで戦車を磨いていた……その両方の記憶が、鮮明なカラー映像で脳内にフラッシュバックしたからです。


「……殺せ。もう俺を殺してくれ……」


「……アレン。あんたが死ぬ前に、私が全裸で『綿飴降れー!』って数理ポエムを詠んでいた記憶を、この世から消去しなさい。さもなくば、最大火力の極大魔法でこの世界ごと心中するわよ」


ルナもまた、真っ赤を通り越して真っ白な顔で震えています。 しかし、この「正気の地獄」を冷徹に観察している者がいました。討伐軍リーダー、ジャッジです。


「……無駄だ。正気に戻ったところで、貴様らの行動が多次元宇宙のバグであることに変わりはない。……全門開放。この非合理な世界を、根源から消去――」


「ちょっと待ちなさいよ、鉄仮面さん」


女神アーステラが、ジャッジの銃口をひょいと指で逸らしました。


「貴方、『知能』が戻れば彼らが変わると思っているの? ……いい? 見ていなさい。アレン、足元に落ちているその『戦車のオイルキャップ』、どうする?」


沈黙の中、知能が戻ったアレンの視線が、地面に転がる鈍く光る超合金のキャップに注がれました。


アレン(IQ185時)の思考: 「(回想)……このパーツを回収し、敵の兵站ロジックを物理的に封鎖するのは、交渉における絶対的なレバレッジだ。……拾おう」


アレン(IQ35時)の思考: 「(回想)……わー! キラキラだ! お宝だーっ! 誰にもあげないぞ! ……拾おう」


そして、今(通常知能)のアレン: 「……あ、なんか強そうな金属。……とりあえず、拾っとくか」


アレンは、無意識にキャップを拾い、大切そうにポケットにねじ込みました。


「…………」 ジャッジのバイザーの中で、膨大なエラーログが流れます。 「……理解不能だ。知能指数が150も変動すれば、行動の選択肢は統計的に収束しないはずだ。なぜ、すべての知能段階において『無意味な金属片を回収する』という単一の非合理的結論に収束する……!?」


「それが『アレン』っていうバグなのよ。知能なんて、彼らの『拾わずにいられない』という魂の渇望の前では、ただの計算誤差にすぎないの」


アーステラが勝ち誇ったように笑う中、隣ではカレンが「排熱効率のため(IQ185)」でも「暑いから(IQ35)」でもなく、「……なんか、落ち着くから」という理由で、いつも通りの露出度の高い鎧を締め直していました。


異世界討伐軍・観測レポート:異常事態

被検体Aアレン: 知能変動に関わらず、落ちている物品の98%を「ポケットに入れる」という固定行動を確認。論理的介入は不可能と判断。


被検体Bルナ: 知能変動に関わらず、アレンの挙動に対して「顔を赤らめる」および「爆発的魔力放出」を行う。感情エネルギーの恒常性を確認。


結論: この世界の住人は、知能の有無に関わらず「おバカ」である。知能操作による修正は、OSの欠陥ではなく「ハードウェアの仕様」により失敗。



後書き(メニュー画面より)

(……プロデューサー様ぁ! 見ましたか!? ジャッジが『……計算が合わない。この世界は、物理法則を超えたバカで構成されている……』って、絶望して膝をついてますよ! 知能を上げても下げても、アレンはネジを拾うし、ルナは赤くなる……。 結局、俺たちが愛した『いつもの光景』が、最強の異世界軍隊を精神的に打ち負かしちゃいました!)

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