第四話 決定論。あるいはラプラスの賢者
王都を目前にした丘の上、三人は「そこにあるはずのない椅子」に座り、チェス盤のような盤面を見つめる一人の青年と出会いました。
「……あと3.2秒で、貴方たちの靴音が私の『予測音波』と一致する。……ようこそ、特異点の皆さん。私の計算通り、この座標で合流できましたね」
静かに眼鏡を上げ、確率の海を泳ぐ瞳で一行を見据えたのは、賢者ゼクス。 かつての彼は仲間の暴走に胃を痛めていましたが、今の彼は、仲間の暴走すらも「正規分布内の誤差」として処理する、冷徹なシステム管理者でした。
「……ゼクス。君の脳内に展開されている並列演算領域……。私の魔導演算器でも追いつけない処理速度だ。君をパーティーの『統合OS』として迎え入れたい」
アレンの提案に、ゼクスは薄く微笑み、盤面を一つ進めました。
「合理的です。アレンさんの統率力、ルナさんの術式、カレンさんの出力。……しかし、貴方たちには『事象のゆらぎ』に対する脆弱性がある。私が介在することで、魔王討伐の成功率は99.9997%まで向上します。……残り0.0003%は、私の『胃の不快感』という名の不確定要素ですがね」
「……いいわ。貴方の演算があれば、私の魔法の着弾誤差をナノメートル単位で修正できる。……完璧な共同研究体制の完成ね」
「……筋肉の疲労蓄積も、貴方のバイオリズム予測があれば最適化できるわ。……これより私は、貴方の指示するベクトルにのみ、全出力を解放することを約束する」
こうして、知能指数の合計が人類の限界を突破した「四賢者」が揃いました。 彼らが王都の門を叩くとき、そこにあるのは「冒険」ではなく、旧態依然とした世界を再定義するための「アップグレード」の始まりでした。
後書き
高知能勇者アレン 「ゼクス。君の加入により、我々の戦術オプションは10の24乗通りまで拡大した。 ……ところで、以前の記憶で君が『胃薬』を常用していたイメージがあるが、今の君なら自律神経を論理的に制御して、胃酸の分泌すら完璧に管理できるだろう?」
高知能賢者ゼクス 「……理論上は可能です。しかし、アレンさんの『収集癖』という名の非合理的な行動を観測するたび、脳内のエラーログが急速に蓄積されるんですよ。 ……ルナさん、カレンさん。後で『アレンさんの行動経済学的分析』についてのミーティングを行いましょう。……もちろん、私の胃壁の保護膜を強化しながらね」
高知能執行官デズモンド斎藤(王都の門の向こう側で) 「(……恐ろしい。門の向こうから、かつてないほどの『高IQな魔圧』が接近している……。 これは単なる冒険者の群れではない。……国家の会計基準を根底から覆しに来る『論理の暴力』だ。 ……あわわ、早く『高知能者用・特別検疫マニュアル』を更新しなければ……!)」
メニュー画面(高知能版) (宇宙規模の演算グラフを表示しながら) 「……プロデューサー様。 ついに全メインメンバーが、IQ120のバフを背負って合流しました。 彼らが出会うことで発生するシナジー効果により、この世界の物理法則すら書き換わりそうな勢いです。 ……次回、ついに一行は王都の門へ。そこで待つ『法と数字の魔術師』斎藤との、究極の論理戦が始まります」




