第五話 草原のマト当てと不都合な真実
村を出たアレンの前に、一体の魔物が立ちはだかった。
それは、岩のように硬い甲羅を持つ大亀、アイアンタートルだった。
「お、スライムより強そうじゃん! 俺の新しい剣の試し斬りには丁度いいぜ!」
アレンは叫ぶなり、鋼鉄の剣を力任せに振り回して突っ込んでいく。
ガキィィィン!
という鋭い金属音が響いた。 当然の結果だ。 剣は甲羅に弾かれ、アレンの手首は痺れ、剣の刃はさらに欠けた。
「いてて! なんだよこの亀、カッチカチじゃねえか!」
アレンは痛む手首を振りながら、亀に向かってべーっと舌を出した。 そんな挑発に意味はない。 亀は無慈悲にも、その巨体でアレンを押し潰そうと前進してくる。
俺は即座に、アイアンタートルの姿を解析した。 全身が硬いわけではない。 首の付け根、甲羅の隙間にわずかな急所がある。
だが、アレンに「首を狙え」と文字で伝えても、彼はきっと狙いを外すだろう。 何せ、彼は止まっているマトすら外しかねない大バカなのだ。
俺は、UIデザイナーとしての本領を発揮することにした。 アレンの視界全体を少しだけ暗く落とし、アイアンタートルの急所だけに、目が痛くなるほどの「真っ赤な巨大な標的」を合成して表示した。
さらに、その標的からアレンの足元まで、キラキラと光る「誘導ライン」を引き、矢印を点滅させた。
ボーナスステージ確定! この赤いマークを百回叩けば、中から伝説の宝箱が出現します! 今ならコンボボーナスで経験値十倍!
「な、なんだって!? 宝箱だと!?」
アレンの目が、宝箱という単語に反応してギラリと光った。 現金な奴だ。 彼は、死ぬ気で標的を追いかけ始めた。
「うおおお! 宝箱! 宝箱! お宝よこせえええ!」
アレンは、俺が表示したガイドラインに沿って、正確に急所だけを狙い打った。 本来なら高度な剣術が必要な精密攻撃だが、欲に目が眩んだバカの集中力は凄まじかった。
グシャリ、と嫌な音がして、アイアンタートルは力尽きた。
俺は即座に、倒れた亀の背後に、偽の宝箱のアイコンを表示した。 そして、その中にあらかじめ用意しておいた、道端に落ちていた「綺麗な石ころ」を放り込んでおいた。
「やったぜ! 本当に宝箱が出た! ……ん? なんだこの石。キラキラしてるけど、価値あるのか?」
アレンは不思議そうに石を眺めている。 俺はすかさず、鑑定結果を画面に出した。
超希少な幸せの石。 持っているだけで、次の町で可愛い女の子に声をかけられる確率が上がります。
「マジかよ! さすが伝説の宝箱だぜ! 大事にしとこ!」
アレンは鼻歌を歌いながら、石をポケットにねじ込んだ。 俺は、彼の単純さに救われつつ、次の戦闘ではどんなエサを用意すべきか、頭を悩ませるのだった。
後書き メインメニュー(主人公)
お疲れ様です。メインメニューです。 改行を増やしてみましたが、いかがでしょうか。 私の表示領域も広くなったようで、大変快適です。
それにしても、アレンという男は「お宝」という言葉に弱すぎますね。 もはやモンスターを狩っているのか、UIのデバッグ作業をしているのか分からなくなってきました。
でもいいんです。 彼がラインに沿って動いてくれる限り、世界は平和なんですから。
次回は、ついにミミック(宝箱の怪物)が登場します。 本物の宝箱と偽物の区別がつかないアレン。 そして、私が用意した「石ころ」を本物だと信じているアレン。 この矛盾を、私はどう処理すればいいのでしょうか。 またお会いしましょう。




