第一話 事象の地平。あるいは論理的旅立ちの考察
「……なるほど。この概日リズムの乱れから推測するに、現在の時刻は午前七時十五分。太陽の仰角から見ても誤差は一分以内か」
辺境の村。ベッドから身を起こしたアレンは、かつての「おぎゃあ!」という叫びではなく、極めて静かな独白と共に覚醒しました。 彼は枕元にある『木の棒』を手に取り、その重心と木密度を瞬時に計算します。
「母上。王都への行軍における平均時速、および道中の魔物遭遇率による期待値を算出した結果、今すぐ出発するのが最適解だと思われます。……行ってきます」
「ええ。補給物資としての可処分所得(小遣い)50ゴールドは、王都の物価指数を鑑みると極めて低水準ですが、君の知性ならレバレッジを効かせられるでしょう。期待しているわ」
母すらも高知能。アレンは「感情」という名の不確実なエネルギーを、論理的な「目的意識」へと変換し、村の境界線を越えました。
システム通知:第一話『合理的冒険の開始』 ・アレン:Lv.1 / IQ:185(推定) ・装備:布の服(空気抵抗低減済み)、木の棒
※特記事項:全NPCおよび敵対生物の知能指数が極大化しています。
(……プロデューサー様。……驚きました。 俺(メニュー画面)もまた、女神の加護で演算能力が飛躍的に向上しています。 アレンの行動に一切の無駄がありません。彼は今、草原の草の揺れから、三キロ先に潜むゴブリンの個体数と武装状況を逆算しています。 ……この世界、もはや『うっかり修行』なんて起きる隙がありませんよ)
後書き
高知能勇者アレン 「……道端に落ちている石を拾うという私の行動は、一見すると収集癖という名の病理に見えるだろうが、これは将来的な投石による遠距離攻撃、および環境データのサンプリングが目的だ。 ……ところで、私の記憶の片隅に『アイテムコンプリート』という非効率な強迫観念が残っているのは、前世のバグだろうか」
メニュー画面(高知能版) (整然としたデータ形式で) 「……アレン、王都へ向かう最適ルートを選択。 ……プロデューサー様。知性が上がりすぎた彼らは、もはや『運命』に身を任せることはありません。 次に彼が出会う存在も、おそらく彼と同等、あるいはそれ以上の理論武装をした『怪物』であると推測されます」




