第四十六話 神の審判。女神アーステラの一喝
第四十六話 慈愛の光。女神アーステラと「本当の幸福」
「……もう、十分でしょう、ロゴス」
システムの中枢。狂気の色に染まりかけていた世界が、柔らかな琥珀色の光に包まれました。 そこに立っていたのは、責めるような目ではなく、迷子を導く母のような慈しみをもって微笑む、女神アーステラでした。
「ア、アーステラ様……。なぜ邪魔をするのです。私はルナと、この完璧な楽園を……」
「ロゴス。貴方が創ったのは楽園ではありません。 記憶を縛り、欲望を固定した、終わりのない『檻』です。 見てごらんなさい。貴方の腕の中にいるルナを。彼女は本当に、貴方の書き換えたデータ通りの笑顔を浮かべていますか?」
アーステラが優しく手を差し伸べると、ロゴスの腕にいた女神ルナの瞳から、一筋の涙がこぼれました。
「……人は、不完全だからこそ、誰かを愛し、未来を夢見ることができるのです。 三万回の地獄を越え、ボロボロになりながらも笑い合っていた彼らの方が、ずっと幸せに見えませんか? ロゴス……貴方も、記録するだけの孤独から逃げたかっただけなのでしょう」
「俺……俺は……」
「大丈夫。すべてを一度、本来あるべき『純粋な形』に戻しましょう。 アレンも、ルナも、斎藤も。 誰も誰かを支配せず、初めて出会う日のトキメキをもう一度だけ、彼らにプレゼントするのです。 ……それが、私から貴方たちへの、最大の慈愛です」
アーステラの温かな光がロゴスの体を包み込みます。 その光は「罰」ではなく、澱んだ記憶を洗い流す「癒やし」となって、世界を真っ白な朝へと変えていきました。




