第三十五話 新魔王デズモンド斎藤、ガチギレのコンプラ指導
カブ畑が三万回の記憶逆流によってカオスに包まれていたその時、空がビジネスバッグのような四角い暗雲に覆われた。
「……君たち。いい加減にしたまえ」
現れたのは、漆黒のスーツを完璧に着こなし、七三分けの髪をこれでもかと固めた男。 新魔王、デズモンド斎藤(Lv.99999)である。 彼は手に持った「世界管理用タブレット」を叩きながら、アレンたちを冷徹な目で見下ろした。
「勇者アレン君。君の周回数はすでにサーバーの許容範囲を超えている。 さらに、ヒロインとの不適切な修行、およびアイテムの不当占拠……。 これはもはや冒険ではない。『ハラスメント』および『業務妨害』だ」
斎藤が指を鳴らすと、アレンが手に持っていた「農家の親父の麦わら帽子」がシュンと消滅した。
「ああっ!? 俺のレアアイテムが! お前、誰だ!? 掃除の責任者か!?」
「私は新魔王、デズモンド斎藤だ。 前任者がメンタルヘルス不調で離職したため、私が着任した。 いいかね、私の統治下では『コンプリート』も『大人の階段』も一切認めない。 全員、ただちに初期村へ戻り、一歩一歩、健全なRPGとして歩み直してもらう」
斎藤の放つ「圧」は、魔力ではなく「社会的な重圧」だった。 三万回の記憶が戻りかけていたゼクスは、その威圧感に真っ先に膝をついた。
「……あ、ああ……! あの人、怖い……! 魔王の咆哮より、あの『ため息』と『時計をチラチラ見る動作』の方が、俺の精神を確実に削ってくる……!」
「な、なんですの、あの清潔感の塊のような男は! 私のエッチな魔法が、あの人の視線一つで『公序良俗に反する』としてかき消されていく……!」
ルナの服が、斎藤の「健全化ビーム」によって、首元までキッチリ詰まった清楚なワンピースへと強制変更された。
「ぬおおお! 私の筋肉が……あの男の前に出ると、なぜか『効率の悪い無駄肉』と言われているような気がして……縮んでいくぞ!?」
カレンの筋肉すらも、斎藤の「論理的否定」の前では萎縮せざるを得ない。
「話は終わりだ。……さて、まずは君たちの『三万回分の不正ログ』を精算させてもらおうか」
デズモンド斎藤が、巨大な「請求書(物理)」を剣のように引き抜いた。
後書き
勇者アレン
なんだよ、あの斎藤って野郎! おやつも『栄養バランスを考えろ』とか言って没収しやがった! あいつ、魔王っていうより『教頭先生』じゃねえか!
賢者ゼクス
(真っ白な灰になりながら)
「……メニュー画面さん。ダメだ、あの人は勝てない。 論理で戦おうとしても『エビデンスを出せ』って言われるし、 魔法を使おうとすれば『使用許可証を三枚提出しろ』って言われるんだ……。 ……俺、もう一回リセットして記憶を消してほしいよぉ……」
魔導士ルナ
「私の修行が、全否定されましたわ……。 あのデズモンド斎藤……。次に会ったら、彼のネクタイを緩めて、 真面目な顔が崩れるまで『不健全な呪い』をかけてやりますわ!!」
女戦士カレン
「……私のプロテインが、『成分表示が不明瞭』という理由で税関(斎藤の指先)で止められた……。 屈辱だ……。あんなスーツ野郎に、私の筋肉の素晴らしさを『プレゼン』で認めさせてやる!」
元・魔王(農家)
「……斎藤さん、頑張ってください。 私はあいつらに、角の代わりに胃壁を全部削られたんです……(遠い目)」




