第三十三話 コンプリートの亡霊と、記憶の消しゴム
あけましておめでとうございます
リセット症候群です
魔王城の跡地。カブの種を蒔こうとしていたアレンが、突如として虚空を見つめ、クワを構え直した。
「……あれ? 俺、何でおやつ食ってんだ? 図鑑が……図鑑のコンプリート率が、0.01%で止まったままだぞ!!」
アレンの咆哮とともに、システムが強制リブートを開始しました。
システム通知:関係性全消去 ・ルナとの『修行』の記憶:消去 ・ゼクスの『真理』と『闇落ち』:消去 ・カレンとの『信頼』:消去 ※なお、アレンの『バカさ』と『収集欲』のみが暴走状態で残留しています。
「おい、そこの青い服のメガネ! お前、賢者だろ? ちょうどいい、俺のアイテム集めを手伝え! それとそこの魔法使いと筋肉女! お前らもだ!」
「……は、はい? あなた、いきなり何を……。 私はゼクス。一応賢者ですが、あなたのような野蛮な男に命令される筋合いは……」
ゼクスは、かつてカレンの腕の中で赤ん坊のように眠っていた記憶を完全に失い、初対面の「他人行儀な賢者」に戻ってしまいました。
「まあ! なんて失礼な方でしょう! 私、ルナは高貴な魔導士ですのよ。そんな泥臭いクワを持った男と一緒にされるなんて!」
ルナも、アレンと「大人の階段」を駆け上がり、リュウに浮気しかけた記憶が消え、ただの「プライドの高い処女魔導士」へと退化。
「ふむ、いい筋肉の持ち主だな。だが、私は修行の身。 名前も知らぬ男に貸す肩はないぞ!」
カレンまでもが、ゼクスを「重り」として愛でていた日々を忘れ、ストイックなボディービルダーに戻ってしまいました。
「なんだ、お前らノリが悪いな! いいから来い! 次のアイテムは、このカブ農家の親父が持ってる『使い古した麦わら帽子』だ! 一万回カブを引き抜かないとドロップしねえレア品なんだよ!」
「えっ、私の帽子!? また私から奪うのか勇者ぁぁぁ!!」
関係性がリセットされ、愛も友情も消え去った冷え切ったパーティー。 しかし、アレンの「コンプリート」という名の狂気だけが、再び彼らを地獄の(物理)周回へと駆り立てるのです。
後書き
勇者アレン
よし! パーティーメンバーも揃ったし(強制)、コンプリート再開だ! なんだかルナとカレンが余計なことを喋りそうになると、 メニュー画面が『ノイズ』を流して邪魔してくるけど、まあ気にしねえぜ!
賢者ゼクス
(初対面のはずのアレンに、なぜか既視感のある腹痛を感じながら)
「……おかしい。初めて会った男なのに、こいつの顔を見るだけで胃に穴が開きそうだ。 それに、あの女戦士さんの筋肉……触ったこともないはずなのに、 手のひらがその硬さを覚えているような……。……嫌だ、怖い……!」
魔導士ルナ
「アレン? とかいうバカ……。 なぜか彼の後ろ姿を見ると、腰のあたりがキュンとするというか、 変な汗が出るというか……。これも呪いの一種かしら!? 誰か解呪して!」
女戦士カレン
「……あの賢者、なぜか私の脇に収まりが良いサイズ感に見える。 無意識に小脇に抱えたくなるが……いかん、私は孤高の戦士だ! 筋肉を他人のために使ってなるものか!」
カブ農家(元・魔王)
「……関係性がリセットされても……。 ……私の受ける被害だけは、一ミリもリセットされてない気がするのは、気のせいか……?」




