第二十九話 旋律の貴公子リュウ、愛の魔法を塗り替える
魔王城が「愛の波動」に包まれ、平和な空気が漂っていたその時。 どこからともなく、天界の調べのような美しい竪琴の音が響き渡った。
「愛を叫ぶ勇者よ……。だが、愛とは叫ぶものではない。……奏でるものだよ」
現れたのは、黄金の髪をなびかせ、歩くたびに薔薇の花びらが舞う超絶イケメン吟遊詩人、リュウ。 彼はアレンの腕の中にいたルナを見つめ、そっと指先を差し出した。
「美しき魔導士よ。野蛮な本能に身を任せるのも一興だが……私の旋律の中で、永遠の静寂を感じてみないかい?」
ルナの瞳が、リュウが奏でる「超高音域の魅了メロディ」に一瞬で染まった。 俺は即座にルナのステータスを確認したが、そこには信じられない文字が踊っていた。
システム警告 ルナの【優先対象】が書き換えられました。 アレンの『本能』<<< リュウの『圧倒的な顔面偏差値と歌唱力』。 現在、ルナはアレンとの思い出を『ノイズ』として処理し、リュウとの『新曲』を脳内で作曲中です。
「あ……ああ、なんて綺麗な調べ。アレン様の『激しすぎる愛』に疲れていた私の心が、洗われるようですわ……。さようなら、本能の勇者様。私は今日から、リュウ様の『ミューズ』になりますわ!」
ルナはアレンの腕を振り払い、吸い寄せられるようにリュウの隣へと移動した。
「な、なんだって!? ルナ、お前、俺の『修行』よりその細っちょろい楽器の方がいいのかよ!」
アレンが叫ぶが、リュウは余裕の笑みで竪琴を一弾き。 その衝撃波(愛の重低音)で、アレンは壁まで吹き飛ばされた。
「本能の力は強い。だが、女の心は『繊細な弦』なんだ。力任せに弾くだけでは、すぐに切れてしまうのさ」
(……おいメニュー画面! 大変なことになったぞ! ルナさんが、俺たちと積み上げた三万回の思い出を『古いカセットテープ』みたいに捨てちまった! ……あ、あれ? でも俺、カレンさんの腕の中にいるから、意外とショックじゃないかも……)
ゼクスはカレンに抱きかかえられたまま、冷めた目で「ルナの略奪」を見送った。
後書き
勇者アレン
……負けた。
俺の『エクスカリバー』が、あんなちっぽけな竪琴に負けるなんて……。
ルナ! お前がその気なら、俺はもっと『情熱的な歌』を歌えるようになるまで、
喉を潰す特訓をしてやるぜ!
賢者ゼクス
(カレンの腕の中で、ポップコーンを食べるような感覚で)
「……いやー、修羅場ですねぇ。
ルナさん、あんなに目がハートになっちゃって。
メニュー画面さん、BGMを『悲劇のヒロイン風』から『泥沼の昼ドラ風』に変えてくれ。そっちの方がしっくりくる」
魔導士ルナ
(リュウの肩に顔を埋め、うっとりとしながら)
「アレン様、今までありがとうございました。
貴方の愛は、私には少し『筋肉質』すぎましたの。
これからはリュウ様の調べの中で、優雅にミイラ(仮)になりたいと思いますわ!」
吟遊詩人リュウ
「フッ……。勇者よ、恨むなら自分の『歌唱力』を恨むんだな。
さあ行こう、ルナ。君のために書き下ろした新曲、『略奪のセレナーデ』を披露するよ」
女戦士カレン
……。
(去っていく二人を見送りながら、ゼクスの後頭部を撫でて)
ふむ、愛の不協和音だな。
だがゼクス、安心しろ。お前の奏でる『悲鳴(特訓中の)』は、私にとって世界一のバラードだぞ!




