第二十六話 勇者、真理(物理)を喰らう。性勇者誕生!
「なあ、ルナ。最近、ゼクスとばっかり『消える修行』してるだろ? ずるいぜ。俺だって、もっと強くなりたいんだ!」
アレンは、ゼクスと修行を終えたばかりでまだ顔を上気させているルナに、真っ直ぐな瞳で詰め寄った。
「ま、まあ! アレン様、あれは非常に、その……体力を消耗する過酷な儀式ですのよ?」
「体力なら自信あるぜ! ルナ、俺にもその『生命エネルギー交換』ってやつ、教えてくれよ。 おやつ三倍にするより、もっとすごいパワーが出るんだろ?」
ルナは一瞬、ゼクスの顔を思い浮かべて躊躇したが、アレンのあまりに無垢で力強い視線に、魔導士としての(あるいは女としての)本能が逆流した。
「……わかりましたわ。アレン様。 勇者たるもの、すべての経験値を糧にするべきですものね。 ……ゼクス様とは『静なる真理』を探求しましたが、貴方とは『動なる本能』を暴走させましょう!」
ルナはアレンの手を引き、かつてないほど強力な「防音と物理結界」を張り巡らせた。
(……おいメニュー画面! あれ、何が始まろうとしてるんだ!? 俺の真理の計算には、アレンとルナの『合体』なんてデータは……あ、あああ! ルナの魔力出力が、俺との時より三倍も高いぞ!?)
ゼクスが泡を吹いて叫ぶが、もう遅い。 俺は即座に、アレンのステータス画面を「最終進化モード」に書き換えた。
警告。 勇者アレン、ジョブチェンジを実行。 【勇者】→【性勇者】。 この状態では、すべての攻撃が『愛の波動』を帯び、 敵を倒すのではなく『絶頂』させて無力化します。
「おおお! なんだか全身から熱いマグマが噴き出してきたぜ! 行くぞルナ! 俺の『エクスカリバー(本物)』が唸りを上げてるぜ!」
爆発する魔力。揺れる世界。 アレンの「バカゆえの無尽蔵なスタミナ」と、ルナの「解放された欲望」が激突し、魔王城の結界が内側から粉砕された。
数時間後。 そこには、全身から後光(ピンク色)を放ち、 一皮どころか十皮くらい剥けて爽快な顔をしたアレンが立っていた。
「ふぅ……。ゼクス、お前こんなスゲえ修行、一人でやってたのかよ。 水臭えなあ! これこそが、世界を救う『真の愛』ってやつだな!」
アレンが指先でパチンと音を立てると、枯れていた大地に花が咲き、 通りすがりの魔物たちが悶え苦しみながら(幸福感で)成仏していった。
後書き
勇者アレン
いやー、大人の階段ってのは、階段っていうより『崖登り』だな!
全身の筋肉が喜んでやがる。
これからは毎日、ルナとこの特訓を欠かさないようにするぜ!
賢者ゼクス
(放心状態で、壁に頭を打ち付けながら)
「……三倍。……俺の時より三倍も長かった。
ルナさん、あんな声、俺の前では出したことなかったのに……」
(メニュー画面さん。……俺、もう一回『真理』の深淵に潜ってきていいかな。 現実が、現実がつらすぎるよ……)
魔導士ルナ
(腰を抜かして座り込みながら、うっとりと空を見上げて)
「……アレン様……。貴方はやはり、本能の化身。
ゼクス様が『精密な魔導書』なら、アレン様は『荒れ狂う嵐』ですわ。
私、もう普通の冒険には戻れませんわ……!」
女戦士カレン
……。
(凄まじい振動に耐えながら、プロテインを握り潰して)
なんという……なんという高密度のエネルギー衝突だ。
あの二人、特訓だけで地形を変えおったぞ!
私も負けていられん。次は誰と……いや、自分自身と特訓だ!




