第二十三話 賢者の再起動と、高速周回的な愛の告白
アイテムコンプリート率0.01%。 魔王の骨を磨き続ける単調な日々に、突如としてゼクスの瞳に「光」が戻った。
(……メニュー画面さん。俺、わかっちゃった。 アイテムを集めても、世界を救っても、俺の虚無は埋まらない。 今、俺に必要なのは……『他者との深すぎる親愛度(物理)』だ)
ゼクスは、隣で魔王の涙を小瓶に詰めていたルナの肩を、ガシッと掴んだ。
「ルナさん。三万回の周回で、俺はお前の魔法の癖、好きなプリンの温度、 そしてまばたきの周期まで全て完全にデータ化した。 ……そろそろ、その先にある『未知の領域』へ、最短ルートで突入しないか?」
ルナは驚きでプリンの小瓶を落とした。
「ま、まあ! ゼクス様、それって……アレン様を差し置いて、 私と『生命エネルギー直接交換(ミイラ化)』の儀式をしようとおっしゃるの!?」
(……いや、アレンさんは今、モブおじさんの初恋を探しに隣町まで爆走してる。 今なら、あの『三十センチの距離』というバカなUIを無視して、大人の階段を三段飛ばしで上れるんだ。 メニュー画面さん、ルナの視界に『ゼクスの魅力100万倍』のエフェクトを出せ。今すぐにだ!)
俺は、プロデューサー様の意図を汲み取り、ゼクスの全身から「聖なる色気」と「攻略推奨」の光を放たせた。
緊急クエスト:賢者との秘め事。 この階段を上れば、ルナの魔力は限界を突破し、 アレンを『過去の人』にするほどの快感が得られます。 ※なお、ミイラ化の確率は0.0001%に修正されました。
「……アレン様は今、おじさんの初恋に夢中……。 なら、私だって、ゼクス様という名の『新種アイテム』をコンプリートしても、罰は当たりませんわよね!?」
ルナの瞳に、賢者をも飲み込むほどの魔導の炎が宿った。 二人は、魔王城の片隅にある「一番豪華な客間(※さっきアレンが家具をコンプリートするために空にした部屋)」へと消えていった。
一方で、アレンは隣町でおじさんを壁ドンしながら叫んでいた。
「おい! なんでおじさんの初恋がドロップしねえんだ! ゼクス! ルナ! 援護魔法はどうした!……あれ? 誰もいねえぞ?」
勇者の呼び声に答える者はいない。 今、世界の片隅で、一人の賢者が「大人の階段」という名の最高難易度ダンジョンを、高速周回で攻略し始めていた。
後書き
勇者アレン
おい、ゼクスもルナもどこ行っちまったんだ?
まあいいや、おじさんの初恋が出ないなら、
おじさんの『初恋の相手』を拉致してきて直接ドロップさせるか!
賢者ゼクス
(賢者の服を脱ぎ捨て、かつてないほど鋭い眼光で)
「……ふふ、ルナさん。ここからはターン制じゃない。
リアルタイム・アクション・バトルだ。
メニュー画面さん、BGMを『官能的なジャズ』に差し替えろ。俺のターンは終わらないぜ」
魔導士ルナ
ゼクス様、意外と……いえ、ものすごく強気ですわ!
アレン様との「おやつ交換」が、砂場遊びに思えるほどの衝撃……。
これが大人の階段……! 私、天国まで飛んでいってしまいそうですわ!
女戦士カレン
……。
(扉の外で、二人の気配を察知しながら)
ふむ、ゼクスの心拍数が急上昇し、ルナの魔力が乱れている。
あれは……新種の合体技の特訓だな!
私も負けていられん。自分の大胸筋と熱い接吻を交わしてくるぞ!




