第二十一話 攻略の果てに、収集癖(コレクター)は狂い咲く
三万一回目のループ。 魔王城の扉の前に立ったアレンは、クワを下ろして静かにつぶやいた。
「……飽きた。もう魔王の顔を見るのは飽きたぜ」
崩壊した玉座でガタガタ震えていた魔王が、一瞬だけ希望の光を宿した。 だが、アレンの次の言葉が、その希望を塵にした。
「おいメニュー画面! この世界にある『全てのアイテム』をコンプリートしてやる。 魔物のパンツから、王様の隠しヘソクリまで、全部だ! 一つでも欠けたら周回やり直しだぜ!」
俺は即座に、画面いっぱいに「収集状況(0.0001%)」を表示した。
新規クエスト:世界の全ドロップアイテム収集。 対象:約10億種類。 注意:一部のアイテムは、特定の魔物を『一万回連続でくすぐる』等の特殊条件で出現します。
「面白え! ゼクス、ルナ、カレン! 狩りの時間だぜ!」
(……うへへ、アイテム……。キラキラする……。俺、もう『図鑑の目次』になっちゃった……)
ゼクスは虚空を見つめたまま、俺のシステムと同期して、全アイテムの出現場所を脳内に直接マッピングし始めた。 もはや彼は人間ではない。歩く攻略Wikiへと進化したのだ。
「アレン様! では、あの魔王様が持っている『世界に一つだけの角の飾り』も、 コレクションに加える必要がありますわね! さあ、剥ぎ取りますわよ!」
「うむ! あの角を引っこ抜く動き……上腕三頭筋の強化に最適だ。 魔王よ、動くな。美しく抜き去ってやる!」
魔王は「死ぬよりひどい!」と絶望の悲鳴を上げながら、全裸(全装備剥奪)にされた。 だが、アレンの執念は止まらない。
道端の雑草を全種類根こそぎ引き抜き、 街の住人全員の靴下をコレクションし、 ついには「聖騎士団の鎧」を全パーツ分解してシリアルナンバー順に並べ始めた。
世界は「勇者の爆走」から「勇者の徹底的な略奪」へと変貌した。
警告。 アイテム所蔵数が限界を突破。 世界のストレージがパンクし、空から「ひのきのぼう」が雨のように降り注いでいます。
「まだまだ足りねえ! メニュー画面、隠しアイテムの『魔王の涙』が出てねえぞ! おい魔王、もっと本気で泣けよ! コレクションが完成しねえだろうが!」
後書き
勇者アレン
コンプリートってのは、男のロマンだよな!
魔王の涙、なかなかドロップしねえんだよ。
よし、次は魔王の『恥ずかしい日記』を掘り出しに行くぜ!
賢者ゼクス
(数字の羅列を呟きながら)
「ID:998244353……魔王のふんどし(伝説級)……ドロップ率0.001%……」
(メニュー画面さん。俺の意識は今、宇宙のサーバーと一体化している。 ……あ、次の周回で、村の裏庭に『錆びたスプーン』が配置されるぞ。忘れず拾えよ……)
魔導士ルナ
世界の全てをアレン様のコレクションルームに詰め込む……。
これこそが、究極の『同棲』の形ですわ!
住人の皆様、お家ごと没収いたしますので、速やかに退去してくださいませ!
女戦士カレン
アイテムを拾うために、一日に数万回もしゃがむ動作……。
これぞ『究極のスクワット』!
私の大腿四頭筋は、もはやアイテムを吸い寄せる磁石へと進化したぞ!




