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転生したら勇者のステータス画面だった件 元UIデザイナー、使いにくいスキルツリーを勝手に改造して世界を救う  作者: ダッチショック
第一章 おバカな勇者たち

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第二話 初期装備の壁とデザインの敗北

アレンは草原のど真ん中で、文字通り裸一貫の状態だった。


先ほど剣術のスキルを無理やり取得させたおかげで、彼の手元には一本の鉄の剣が出現している。


しかし、問題はその先だ。


「よし。剣も手に入れたし、このまま魔王を倒しに行くぜ。風が気持ちいいなあ」


アレンが股間を隠すこともなく、堂々と歩き出そうとする。


馬鹿か。通報される。


魔王に会う前に、文明社会のルールによって投獄されるのがオチだ。


俺は即座に、彼の視界の中央に巨大な警告を表示させた。


エラー。


重大な規約違反を検知しました。


現在の服装は、公共の秩序を著しく乱す恐れがあります。


装備を変更してください。


「ええ。規約違反ってなんだよ。自由が売りの異世界じゃないのかよ」


アレンは不満げに鼻を鳴らした。 俺は溜息をつく代わりに、装備変更画面を彼の目の前に展開した。


しかし、ここで俺は絶句した。


前世で見てきたどんなクソアプリよりも、その画面の構成は酷いものだった。


服を着る。


その一つの動作をするために、まず「外見設定」を開く。


そこから「パーツ選択」を選び


さらに「布製品」という項目を探し当てなければならない。


階層が深すぎる。


おまけに、決定ボタンが画面の右端ギリギリに配置され、キャンセルボタンが中央に鎮座している。


これを作った奴は、ユーザーに服を着せる気がないのか。


「めんどくせえなあ。もう裸でいいだろ。防御力なんて、当たらなきゃどうってことないし」


アレンが画面を閉じようとする。


俺はそれを許さない。


俺の意識を演算処理に回し


リアルタイムで装備画面の構造を書き換えていく。


無駄な階層をすべて統合し、今持っている布の服だけを最前面に持ってきた。


ワンクリック装着。


今すぐ着用して防御力を二倍に。


ボタンを押さない場合、五秒後に強制転移開始します。


「は?強制転移…?よくわかんねえけど、消えるのは勘弁だ」


焦ったアレンが、俺が中央に配置した巨大な「着用する」ボタンを叩く。


光が溢れ、ようやく彼の体にみすぼらしい布の服が纏わされた。


ひとまず、公然わいせつ罪で逮捕される危機は去った。


だが、安堵したのも束の間だった。


アレンは服を着た瞬間、何を思ったのか、腰に差した剣を抜き放った。


「よおし。服も着たし、試し斬りといくか。あそこにいるスライム、あいつで新スキルの威力を試してやる」


アレンが指差した先には、確かに青い粘体状の魔物がいた。


しかし、俺はそのスライムの頭上に表示されている情報を読み取り、戦慄した。


名前 キングスライム レベル 五十 状態 空腹につき極めて凶暴


勝てるわけがない。


レベル一の初心者が挑んでいい相手ではない。


俺はすぐさま「逃げる」ボタンを画面いっぱいに広げようとした。


しかし、勇者の闘争心に火がついたのか、俺のシステム制御に干渉するほどの熱気が彼から放たれる。


「行くぜ。必殺、剣術レベル一斬り」


待て。


そのスキルの名前は俺が適当につけた仮称だ。


俺は必死に、彼の視界を赤い警告色で塗りつぶし、退却を促すメッセージを連打した。


アレンの放った剣術レベル一斬りは、キングスライムの表面をわずかに揺らしただけで終わった。


逆鱗に触れた怪物が、その巨体を震わせて跳躍する。


このままでは押し潰されて終わりだ。


俺は一瞬で演算を終え、スライムのステータス画面に干渉した。


個体名 キングスライム


状態 空腹


俺はこの空腹という文字を書き換え、さらに周囲にあるオブジェクトの情報を無理やり流し込んだ。


状態 満腹、かつ猛烈な睡魔


瞬間、空中で獲物を狙っていたキングスライムの動きが止まった。


どさりと地面に落ちた怪物は、アレンの足元で大きな鼾(いびき)をかき始める。


九死に一生を得た。


「お、おい。俺の一撃、効きすぎて眠っちまったのか。俺、もしかして天才」


違う。俺のデバッグのおかげだ。 俺は疲労困憊のメモリを休めながら、アレンの視界に大きく文字を表示させた。


クエスト完了。報酬として、速やかな撤退を推奨します。


「そうだな。今のうちに逃げるか。いや、戦略的撤退だ」


アレンが情けない声を上げて走り出す。


俺は彼の背中を見守りながら、次回のアップデート内容を考え始めていた。


後書き メインメニュー(主人公)


お疲れ様です。


メインメニューです。


今回も危ういところでした。


キングスライムのパラメータを書き換えるのは、なかなかの重労働です。


本当は「満腹」ではなく「消滅」と書き換えたかったのですが、今の私の権限では状態異常をいじるのが精一杯のようです。


勇者アレンは自分の実力だと勘違いしていますが、まあ、その方が操作しやすいので良しとしましょう。


さて、次回は「村の武器屋での値切り交渉」についてです。


ぼったくり店主の販売価格を、私の力でどこまで適正価格、あるいは投げ売り価格に書き換えられるか。


デザイナーの意地を見せてやりますよ。


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