第十九話 魔王の奥義! 「時戻し」という名の二度寝
ついに辿り着いた魔王の玉座の間。 魔王は、聖騎士団を壊滅させて乗り込んできたアレンを見て、恐怖に震えながら奥義を唱えた。
「よ、よくも我が軍を……! だが、この時間はなかったことにさせてもらう! 秘奥義――『時空回帰』!!」
激しい光が溢れ、世界が歪む。 気がつくと、アレンたちは「第一話」の冒頭、あの懐かしい村の入り口に立っていた。
「……あれ? デジャブか? 俺、さっきここで石を投げた気がするぜ」
アレンは首を傾げながらも、第一話と全く同じ動きで、足元の石を拾い上げた。
(……おいメニュー画面! 戻されたぞ! 魔王の奴、都合が悪くなってリセットボタンを押しやがった!)
ゼクスだけは、賢者の知能ゆえに記憶を保持していた。 だが、俺もまた、バックアップデータを持っていた。
俺は即座に、アレンの視界に「強くてニューゲーム」のバナーを表示した。
期間限定・超高速周回キャンペーン実施中! 現在、世界の時間が『早送りモード』になっています。 さっさと魔王のところまで戻れば、おやつが三倍に増量されます。
「おやつ三倍!? よっしゃあ! 全速力で魔王城まで駆け抜けるぜ!」
アレンは、かつて数ヶ月かけて歩いた道のりを、おやつへの執念だけで爆走し始めた。
第一話の村長の話を「スキップ!」と叫んで無視し、 第五話のアイアンタートルを「二回目だから飽きた!」とクワの一振りで粉砕。 第十話の迷宮パズルに至っては、「答え知ってるぜ!」と、石を投げる前に直接扉を蹴り破った。
(……早すぎる! メニュー画面さん、俺の魔力が追いつかない! あいつの爆走に合わせて地形をロードするだけで精一杯だ!)
ゼクスはカレンに肩車されたまま、音速で流れる景色の中で悲鳴を上げた。 ルナもまた、アレンの背中を追いながら確信した。
「アレン様……! 未来を予知して最短ルートを突き進むそのお姿……、 もはや時間の神を超えてしまいましたのね!」
数時間後。 再び玉座の間の扉が、爆音とともに吹き飛んだ。 そこには、さっきまで戦っていたはずのアレンが、息一つ切らさずに立っていた。
「よお、掃除のおじさん! おやつ三倍のキャンペーン、まだやってるか!?」
魔王は、自分が数万年の魔力を込めて放った奥義が、 わずか数時間で「なかったこと(早送り)」にされた事実に、膝から崩れ落ちた。
後書き
勇者アレン
なんか、今日の冒険はやけにテンポが良かったな!
デジャブっていうのか? 次に何が起きるか全部わかっちまうんだ。
これが『天才の領域』ってやつか……。肩が凝るぜ!
賢者ゼクス
(激しい乗り物酔いで、地面に突っ伏しながら)
「……アレンさん、二度寝はもう禁止ですよぉ……」
(メニュー画面さん。魔王の顔、見たか? 自分の必殺技がただのショートカットに使われた絶望……。 正直、今回ばかりは魔王に同情するよ)
魔導士ルナ
アレン様が迷宮のパズルを解く前に扉を破壊した時、
宇宙の真理が見えましたわ!
「答えがわかっているなら、過程など不要」……。
なんて効率的で、残酷なまでの愛の形なのかしら!
女戦士カレン
二度目の冒険……、筋肉の記憶が呼び覚まされた!
一度通った道なら、どの岩がどれくらいの重さかも完璧に覚えている。
次はぜひ、このまま三周目、四周目と周回したいものだ!




