第十話 迷宮の崩壊をダンスで防げ
扉の前で、アレンが投げた石が「正解の穴」に入った。
しかし、正規の解法ではなく物理的にこじ開けたせいで、迷宮の自浄作用が暴走を始めた。
天井からは「祝福」とは程遠い巨大な岩が降り注ぎ、周囲には不気味な警告音が鳴り響く。
「おお! 扉が開いた途端に、賑やかな音がしてきたぜ! これはお祝いのパーティーか!?」
アレンは能天気に笑いながら、落下してくる岩を頭でヘディングしようとした。
(止めろ! 死ぬぞ! メニュー画面、何とかしろ!)
ゼクスが泡を吹いて叫ぶ。 俺は即座に、迷宮のすべてのエラーノイズを「最新のダンスミュージック」に変換。
さらに、アレンの視界に巨大な音ゲーのようなインターフェースを投影した。
緊急イベント発生! 古代の守護神とのダンスバトル! 降ってくる「岩」は、実は「豪華景品」です! ただし、赤いバツ印の地点で避けないと、景品が消滅します! さあ、ステップを踏んで、すべての岩を華麗にスルーしろ!
「なに!? 景品が消えるのは困るぜ! よーし、ダンスの始まりだ!」
アレンは、俺が表示した「回避ステップ用マーカー」を正確に踏み始めた。
一見すると滑稽な足踏みだが、俺が背後に「黄金の残像エフェクト」を合成したおかげで、ルナやカレンの目には聖なる儀式に見えていた。
(……おいメニュー画面。扉の奥の毒ガス罠、俺が消臭魔法で何とかするから、あいつをそのまま踊らせておけ!)
ゼクスが死に物狂いで魔法を放ち、扉の先の安全を確保する。
俺はアレンの足元に「コンボ数」を表示し、さらにやる気を煽った。
百コンボ達成! 今なら足元の靴が「光速のブーツ」へと一時的に進化中! そのまま、扉の奥までムーンウォークで突き進め!
「ムーンウォーク!? よくわかんねえけど、後ろ向きに滑ればいいんだな!」
アレンは、もはや勇者というよりは、迷宮の床を磨き上げる掃除機のようになって奥へと進んでいった。
こうして、迷宮崩壊という絶体絶命の危機は、一人のバカのダンスと、二人の共犯者の必死の工作によって、無事に(?)乗り越えられたのだった。
勇者アレン
いやー、ダンスって意外と疲れるんだな! でも、あのゴーレムたちも後ろで踊ってたし、 やっぱり世界を救うには、リズム感が必要なんだってわかったぜ!
賢者ゼクス
(白目を剥きながら) 「アレンさん、最高のステップでしたよぉ……」 (……メニュー画面さん。あのゴーレム、アレンがムーンウォークで蹴り飛ばしただけだぞ。それを『バックダンサー』として演出するお前の加工技術、もはや魔王より恐ろしいよ)
魔導士ルナ アレン様が後ろ向きに進む姿……。 あれは「過去を振り返り、すべてを包み込む」という聖者の慈愛の表現なのですね。 あまりの神々しさに、魔力が逆流しそうですわ!
女戦士カレン
あの足首の柔軟性……。 戦士として、あそこまで関節を使いこなせるとは! 次はぜひ、一緒にサンバを踊りながら魔王城を攻略したい!
メインメニュー(主人公)
(静かにシステムを冷却しながら) ……プロデューサー様。 次は、このおバカ三人を「静かな街」へ連れていこうと思います。 これ以上の激しい運動は、私のサーバーが持ちません。




