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87日目:私のあるべき姿。
八十七代魔帝暦二二年・巨蟹の月第二十六日・属性(風)・天気:曇り
早朝の第三屋外運動場。眼前には無数の真新しい蝋燭。
ここ数日、授業以外では休んでいた魔力制御訓練を今朝から再開します。
不安げなヌリアに見つめられながら、目を閉じ心に問うのは私のあるべき姿。
炎属性魔術が嫌いです。それでも、ティコは私を選んだ。
世界大戦期、多くのモノを灰にした歴代のティコ。夢のなかそれらを後悔した末に彼らが願ったのは、ティコの炎が誰も傷つけず優しく未来を照らすこと……。
瞬間、自分のなかでなにかがカチッと噛み合います。以前説明された、魔術師名に身体と魂が馴染むというのはこういう感覚なのかもしれません。
そうして目を開くと、そこには無数の灯りが広がっていました――。




