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717日目:見送りと耳飾り
八七代魔帝暦二四年・銀羊の月第十七日・属性(風)・天気:晴れ
「耳飾り、もう着けてくれないんだ……」
午後、帰省するカルド君を魔導機関車の駅まで見送りに来たんですが……。
乗降場の長椅子に座り、一緒に魔導機関車の到着を待っていると、そう言ってカルド君がどこか寂しげな様子で、こちらを見つめてきます……。
これは、どう答えるのが正解なんでしょう?
確かに、アーシェと偽装交際を始めてから、カルド君が誕生日にくれた耳飾りなどは身に着けないようにしてはいますけど……。
返答に悩んでいると、駅構内に魔導機関車の到着を告げる鐘の音が響き渡ります。
数分後、答えを待たずに魔導機関車へ乗り込むカルド君。その背中を、私はただ無言で見送ることしかできませんでした……。




