チェックメイトだ、ブラックホール
「チェックメイトだ、ブラックホール」
ビルの地下駐車場で麻薬の取引をしていた犯人を、刑事が追い詰めた。
犯人は、麻薬や拳銃の密売人で、裏社会で「ブラックホール」という異名を持つ男だ。
「さあ、観念しろ。麻薬取締法違反で逮捕する」
刑事が、犯人の首根っこを掴み、壁の一角に投げ飛ばす。
「痛てて。刑事さん、相変わらず乱暴だなあ。まったく、毎度毎度、変な言いがかりはやめて下さいよ。いったいこの俺が、どこに麻薬を所持しているというのでさあ」
犯人が両手を天に向け、首を傾げてせせら笑う。この男をこうして追い詰めたのはこれで五度目だ。いつも密売の瞬間は目撃しているものの、身体検査をすると、おかしなことに、肝心の違法物を見つけられない。
「さあ、刑事さん、いつものように車、衣類、所持品、好きなだけ検査をしてくだせえ。どうせ何も出てきやしないですがね」
しかし、今日の刑事はいつもと違う。
「もうそんな無駄なことはしねえよ。実は、あるルートから情報を得た。お前が麻薬を隠しているところは、もうとっくにお見通しなのさ」
「な、なんだと」
「さあ、パンツを脱いで後ろの壁に手を付け」
刑事は、犯人に指示通りの体勢をさせるや否や、犯人のお尻の穴に、右手を手首の辺りまで一気にズボッと突っ込んだ。
「お前の異名が何故ブラックホールなのかがよく分かったぜ」
そう言って刑事は、お尻の穴から麻薬が入った大量の袋をほじくり出した。
「まさか、こんなところに隠していやがったとはな。おや、まだ奥に何かある……」
刑事が、尻の穴の隅々を右手で引っ掻き回すと、お次は、拳銃が三丁出てきた。
続けて、携帯型ゲーム機、豆電球2個、魚肉ソーセージ、そして最後に一羽の白い鳩がパサパサと飛び立った。
「物的証拠は揃った。もう言い逃れは出来ねえ。お前を逮捕する」
次の瞬間、不思議なことが起きた。刑事が、腰の手錠に視線を移したほんの一瞬に、犯人が忽然と姿を消したのだ。
慌てて辺りを捜索しても、姿はどこにもない。ここは、地下駐車場の一角、逃げ場などない筈なのに。
守衛室に飛び込んだ刑事は、犯人の行動を撮影した防犯カメラを見て、腰を抜かした。
そこには、犯人の逃亡の様子が克明に映っていた。
なんと犯人は、自分のお尻の穴に身を隠し、この世から消え去ったのだ。