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結局、僕はパーティを首になってしまった。優しい勇者様は何度も謝ってきたが、実際役に立った記憶はないので仕方ない。
しかし、困った。寝坊しても怒らず、人々からの信頼もあるこんな勇者はなかなかいない。むしろ何で僕を採用してくれたのかは謎だったし。新しい職を見つけなくては。この前、実家に帰った時エドから簿記の検定テキストを渡されたばかりだ。
とりあえず、街に繰り出そう。何かみつかるかもしれない。
港町には、貿易店やらレストランやらなんでも揃っている。マリンアクティビティだってあるが、一度浮き輪の上で寝てしまい、沖に流されたのがトラウマなのだ。僕は浜で寝っ転がりながら人の様子を眺めていた。
ところで、僕の好物はわたあめだ。美味しいのはもちろんあのふわふわ感がなんだか安心する。大きなわたあめの中で眠るのが夢。浜でわたあめの夢をみながらうとうとしていた。
「イチゴアメくださーい!」
「はいよ!今日は何個にする?」
「じゃあ、5個で!」
「いつもありがとね!おまけで新作のわたあめつけとくね。」
うつらうつらした中でそんな声が聞こえた。イチゴアメは若い庶民に大人気のエモい食べ物だ。持ち込んだのは異世界JK。(JKがどんな職業かわからないが、この世界に来るまでJKだったと語っていたらしい。エモいもそのJKが流行らせた。)そんなことより、新作のわたあめ!!僕はすぐに買いに行った。
「わたあめくださーい!!」
「はーい。何色にする?」
「色?」
店員のお姉さんはメニューを取り出した。わたあめは7色あってそれぞれ味が違う。
「白で!」
僕は一番シンプルなのを頼む。
「お兄さん通だねー!内緒でちょっと大きく作ったげる!」
店員さんは僕の顔の何倍も大きなわたあめを差し出してきた。
「わー!ありがとう!」
るんるんで受け取って一口食べる。
「おいし〜!!」
わたあめは普通のより甘くてふわふわしていた。
店の前で夢中で食べきって、また来ようと店の名前を確認していると、スタッフ募集の張り紙に気づいた。イチゴアメとわたあめが大好きな方大歓迎という文字を見て、僕は履歴書を買いに出かけた。