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先程から散々悩んでいるのをみればわかるかもしれないが、今、僕は就活中なのだ。アカデミーを卒業して一年。みんな何となくのコネと成り行きで何かしらの職についていく。まぁ、なんとかなるとずっと家で寝ていたのが祟って、僕はまだ職を見つけていない。どうしよう。ついに先日、お父様にやんわりと早く職を見つけるよう諭され、エドが補佐を探しているからセシルを勧めといたからね。と言われてしまった。
エドは僕のお兄ちゃんでルピア伯爵家の跡取りだ。ルピア伯爵家は代々王宮で勘定奉行(異世界人が持ち込んだ言葉)をやっている。むかし、この国には、きちんとした帳簿が無く、支出と収入をとりあえず書きつけた手帳しか無かった。そんな中。やってきた眼鏡をかけた知的な異世界人は憤り、貸方借方の基礎からこの国の貴族に教えたそうだ。その中でも一番真面目だったルピア伯爵家は異世界人の経理課長さん(本名は不明。国の財政危機を救った彼に名前を尋ねたら、しがない経理課長ですよと答えたという伝説による。)にみとめられ、勘定奉行として働いている。ちなみに王国の当初は経理部という名でやっていたのだが、その後やってきた異世界人に王国の組織について説明した際に
「あーつまり勘定奉行ってことやんな?お任せあれ〜ってな。経理部って硬すぎやし、勘定奉行でええよな。」と改名させられてしまったとの逸話がある。その異世界人はフラワームーンという劇場を作り、全く新しい演劇を始めた伝説の人となっている。
話はそれたが、エドは簿記1級(経理課長が持ち込んだ勘定奉行には必須の資格だ。大抵は3級しか持ってないので、1級である兄はかなり優秀といえる。)であり、電卓や算盤(両方とも異世界からもたらされた)もかなり使いこなしている。ちなみに、電卓はこの国には一台しかない。特殊なエネルギーを必要とするらしく、中に入っていた電池というものが切れてしまってからは、魔法でどうにか動かしている。エドは魔法もかなり上手いのでどうにかなっているが、この貴重な電卓を壊したら大変なことになりそうだ。技術者がどうにか複製を試みているらしいが、勘定奉行が忙しくて、あまり電卓を解体して仕組みを調べることができないみたいだ。
まぁ、そんなエドはかなり忙しい。7時に家を出て帰って来るのは21時。年に一度の決算(具体的に何をしているのかわからないが)の際には2日徹夜。お金はまあまあ貰えるが、使う暇がないと嘆いている。そんなエドの補佐…嫌すぎる!!21時に帰ってきてご飯やらお風呂やらで寝られるのは23時として、朝の準備(貴族の服はかなり着るのがめんどくさいので、僕は普段寝巻きか運動用の軽装だ。)で6時には起きるとすると、眠れるのは7時間。無理無理。僕は10時間は寝ないと頭働かないタイプだし。そもそも、数字見てると寝ちゃうし。王宮の職員ってみんな固くて真面目だから寝たらめちゃくちゃ怒られそうだし。絶対無理。
お仕事が嫌すぎたので、ちょっとテンション高め(当社比)のを書いてみました。簿記1級は神の所業だと思ってます。