第12章 雪と崩壊
更新:2021.10.20
雪は綾に運ばれるように連れられて、自室に戻ると一人ただ涙を流し続けた。
日が暮れ始めた部屋に扉を叩く音がする。雪は振り向くことすら億劫で、黙っていると声がかけられた。
「綾です。入りますよ。」
そう言って、綾は部屋に入ると静かに明かりを一つ灯した。
「雪。」
「…。」
「私の部屋に行きましょう。今日は誰も貴女についていることが出来ませんから…発作でも起きたら大変です。」
「李珀は…?」
「隆盛と李珀は東刃の槍郡に向かいました。」
「悲しみもしないのね」
「…王としての役目を果たしに行かれたのです。」
綾が困ったような顔をして雪を見ている。雪は鼻で笑って感情のない虚ろな瞳で綾を睨み付ける。
「出ていって」
「ですが…」
「いいから出て行ってよッ!!」
雪が綾に逆らったのはこれが初めてだったと思う。一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに綾さんの表情は引き締まる。
「ダメです。これは王命ですので、無理矢理にでも連れていきます。」
綾は雪の手を取ると、彼女が暴れようとも無理矢理に手を引っ張って自室へと連れていった。
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