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第?章 密談
更新:2022.5.25
昼間、雪がいた広場に三つの影。他には誰もいない。
「どうだった?」
「途中で見失った。」
「ガキも尾行できねーのかよ。」
「なんだと?」
「止めろ。揉めても仕方ない。…ただ者じゃないと言っただろ。」
揉めるのは四十代くらいの体躯の良い男と、それとは対照的な小柄な男。その揉める二人を諌めるように割って入るのは、雪と話をしていた高秦だった。
「ああ、あの少年、気配すら感じさせてなかった。俺は自分が撒かれてることにも、気づかなかったんだ。」
「どの方角に向かったかも分からないか?」
「ああ。相当の手練れだ。」
ため息交じりに答えるのは小柄な男で、やれやれと首を左右に振る。
「どうする?あの方に報告するか?」
体格の良い男が高秦に問う。少し考えている様子だったが、男に頷いて見せる。
「ああ、そうだな。頼めるか?」
「分かった。玉廉様には私から伝えておこう。」
「しっ!聞かれたらどうする。」
名を出した男の口を高秦は手で塞ぐ。
「わ、わりぃ…」
高秦は小さくため息をついてから、次からは気を付けるように注意して、3人の男は静かに散会した。