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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
ラブストーリーをしよう
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前途多難なファンタジー/5

 細長いゼリーに手を伸ばした独健は不思議そうな顔をする。


「グリーン アラスカって何だ?」


 野郎どもとよく飲みにいく明引呼は、もちろん知っていた。


「五十五パーのリキュールとジンを、ただシャイカーで振っただけの酒だ」


 甘く魅惑的な酒。アルコールの匂いがしない危険な代物。酒しか入っていないカクテル。ラムネを取った貴増参は、みんなを見渡す。


「アルコール度数は何パーセントなんでしょう?」

「九十七パーセントです〜」


 左端の席に座っていた、月命の凜とした澄んだ儚げな声が響き渡った。


 そういうわけで、颯茄はいつもノックアウトされているのである。マスカットをシャクっとかじった夫から交換条件が提示され、


「それ以外なら、いいよ」


 他の夫たちが頭痛いみたいな顔をし、


「焉貴に酒を飲ませると……」

「ボクも飲みたい」


 夫たちから吐息がテーブルの上に降り積もった。


「孔明に飲ませると……」


 颯茄も交じって、ぼやきが入る。


「さらにハイテンションになって、大変なことになる!」


 左側のお誕生日席で、酒のメニューに目をキラキラさせていた張飛が、


「俺っち、これ五升分取っていいすか?」


 単位が違っていることに、颯茄へ目が天になった。

 

「え……? 浴びるほどの飲む気ですか?」

「危険な香りがしてるねえ。映像見るどころじゃなくなるんじゃないの?」


 チョコをかじっていた燿が言うと、颯茄は苦渋の選択を迫られてしまった。

 そこへ、優しいお酒が雅威から告げられる。


「俺はビールだな」

「お酒は却下ですっ! ジュースです〜」


 凜とした澄んだ女性的な響きだったが、月命の声は有無を言わせない口調だった。


 みんなの視線はソフトドリンクにだけ向けられ、それぞれの席に自動的に配達されてくる飲み物が店から届けられて、颯茄はお菓子にさっそく手を伸ばした。


「んん〜♪」


 食べクズを口のまわりにつけたまま、もぐもぐと幸せそうに味わう。誰も話す人がいない食卓。マスカットを食べながら、メロンジュースを飲んでいる。フルーツだらけの焉貴から、妻に注意がやってきた。


「何、食べてんの? お前が話すんでしょ?」

「うまい◯のチーズ味に目がなくて……」

「お前、お菓子好きだよね?」

「大好きです!」

「いいから、進めちゃって」


 手でお菓子のクズを払って、颯茄は夫たちを見渡す。


「演じてみてどうでしたか? みなさん」

「非現実的だった……」


 この世界の大人は全員浮遊するのだ。瞬間移動するのだ。それを上回ることをしないと、面白くないのである。


「とりあえず一人ずつ、作品の内容に触れない程度で、前評価をしてください」


 ノリノリの颯茄とは打って変わって、夫たちからは返事が返ってこなかった。


「…………」


 誰も言ってこない。孔明はヨーグルトを小さなスプーンですくい上げていたのをやめて、左隣にいる、チョコレートを食べている人に話を振った。


「あれ〜? 光、いつも最初に話すのに、どうしたの〜?」

「今回限りにしていただきたいです――」


 遊線が螺旋を描く声は優雅さはなく、衝撃の内容だった。滅多にまっすぐ断ってこない光命。


「お前、光に何したの?」


 椅子の上で両膝を抱えた焉貴に問い詰められ、颯茄は両手を前で急いで横に振った。


「いやいや! 何もしてないですよ! ただ、年齢設定を若干下げたんです」

「詳しく言わねぇってことは、十八より下にしただろ?」


 右隣で、みかんを食べていた明引呼の言葉。光命の十八歳未満はいけないのである。解禁しては。だが、妻も負けていなかった。


「もともと、そういう設定だったんです!」


 昔に書いたものなのだ、光命が演じたのは。夫たちが一斉にあきれた顔をした。


「優雅な王子じゃないな……」


 もう撮ったのだ、何を言われようがいいのである。颯茄は右の誕生日席にいる夫に問いかける。


「独健さんは?」

「俺も今回限りにしてほしいな」


 同じ内容が返ってきてしまった。

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