表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
733/962

Time of judgement/32

 凄まじい断末魔を残して、次々に浄化――地獄へと落ちてゆくのを、悠々と見物しながら、シズキの鋭利なスミレ色の瞳は、いつにも増して鋭くなっていた。


「俺の武器が何でできて、何の目的で持っているのか考える頭もないとはな。存在する価値もない。今すぐ地獄に落ちて、神の前に跪くがいい!」


 装填式ではなく、霊力で銃弾が自動的に入る拳銃。横向きに構えたフロンティアから、線を描くような、物質界ではありえない速さで打ち込まれ続けてゆく。


 ズダダダダダン!!!!


 線の細い瑠璃色の貴族服と、聖なるゴスファッションから、敵は猛スピードで離れ吹き飛ばされてゆく。


 浄化されてゆく敵を冷静な水色の瞳に映しながら、崇剛は千里眼を使って、遠く離れた本陣の上空に浮かぶ、赤目の天使――ナールをうかがう。


 物質界よりも、霊界のほうが科学技術は発展しています。

 守護をされる天使が持っていらっしゃる武器は、神から与えられたものという可能性が非常に高いです。

 従って、私たち人の想像をはるかに超える構造をしているという可能性が99.99%――

 何らかの方法で、安全装置がついているという可能性が99.99%――

 ですから、正神界の私には、シズキ天使の銃弾は間違っても当たらないのです。

 私のダガーと同じなのかもしれませんね。

 ですから、ナール天使の大鎌では私は倒せない。

 そうなると、以下の可能性が99.99%――で出てくる。

 彼はあの晩、私を守るためにそばにいた――。


 まわりの敵を蹴散らしとところで、


「貴様ら邪神界のために、この武器はある」


 シズキが捨てゼリフを吐くと、天使の神経質な手が崇剛のよく似たそれをつかみすっと消え、自分の陣地へ無事に戻ってきた。


 だが、俺様天使の怒りはひどく、人の扱いもひどかった。


「貴様、情報収集を優先して、少しは自分の身も心配もしろっ! 天使の武器が貴様に効かないことを知るために、わざと敵に捕まって。貴様、余計な仕事を増やすな!」


 崇剛を突き飛ばすように、手を乱暴に離し、


「っ!」


 神父は息をつまらせて、紺の長い髪が衝動で全て胸の前へ落ち、茶色のロングブーツはつんのめりそうになりながら何歩か歩んでいき、倒れそうになったが、何とか踏ん張って、優雅さを取り戻した。


 情報収集をしている間に、戦場はまた激変しており、正神界の群奥深くへ入り込んでいた邪神界勢は一斉に引き始めていた。


 そんなことは気にせず、ラジュはニコニコの笑みで、


「それでは、さっき間違えてしまいましたので、直感――天啓をもう一度投げましょうか〜?」


 空へ向かって投げる仕草をすると、金色の光がすうっと登っていき、ベルダージュ荘を目指して飛んでいった。


 人よりも遠くが見える天使の瞳で、光の行方を追い、


「今度はきちんと届きましたよ〜」


 俺様天使にしっかり叱られた優雅な策略家は、トラップ天使の言動に違和感を強く持ち、冷静な水色の瞳をついっと細めた。


 おかしい……。

 なぜでしょう?

 先ほど一度飛ばしています。

 なぜ、もう一度飛ばすのでしょう――?


 崇剛は思う。自身がひとり倒れるのなら、戦いの序盤で飛ばした天啓だけで間に合うはずだ。


 膨大なデータを精巧な頭脳にザーッと流して、出てきた答え――水色の瞳は、隣に立つ漆黒の髪を頭高くで縛っている白いローブを着たダルレシアンを捉えた。


(そちらの可能性が出てきた……)


 そうこうしているうちに、戦場は戦いが始まる前のように、双方の群が整列した状態に戻り、何かが起きる予感が強く漂っていた。


 そこへ、神から送られてくる情報を聞き取り続けていたラジュが、おどけた感じで凛とした澄んだ女性的な声をゆるゆる〜と鳴り響かせた。


「おや? みなさ〜ん、朗報です〜」


 正神界の軍勢が一斉に、金髪天使へ視線を集中させる。


「何だ?」


 誘迷なサファイアブルーの瞳は楽しげに微笑んで、こんなことを平然と告げた。


「敵の総大将自ら、私たちへ向かって攻撃を仕掛けてきたそうです〜。神と同じ力を持つ者です。ですから、私たち天使を含め、全員が消滅です〜」


 カミエの地鳴りのような低い声が真っ直ぐツッコミ。


「それは悲報だ」

「うふふふっ。火属性の攻撃がきますよ〜?」


 ざわついている味方勢を尻目に、ラジュはいつも通りニコニコしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ