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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
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Time of judgement/23

 そうして、瞬間移動してきたみたいにぱっと無事に戻ってきた、大鎌が鉄の重たい歪み音を響かせて、ナールの手に収まっていた。


「貴様さっきから、何と武器を交換して取り戻している?」


 潔癖症天使からの問いかけに、ナールはとんでもないものを答え始めた。


「バイブ、エロ本、電マ?」

「貴様のポケットは色情魔か!」


 シズキは首を元へ素早く戻して、火山噴火させた。それなのに、ナールはどこ吹く風で、ナルシスト的に微笑む。


「俺らしい、いい作戦でしょ? 相手がひるんだところで取り返すっていうね」

「貴様はエロ策士だな」


 なぜか機嫌のいいシズキは、長々とひねくれ言葉を浴びせることなく、鼻を鳴らしただけだった。


    *


 ダガー一本で、対応できるような戦いではない。やはり、魔導師と出会ったことは、神の戦術のひとつだったのかも知れなかった。


 敵を持ち上げて、後続してきた別部隊の上へ落とす。陣地を変えて、あちこちで試みていたが、ダルレシアンは春風のようにふんわり微笑んだ。


「そろそろ見極められてきたんじゃないかな?」


「えぇ」崇剛は優雅にうなずきながら思う。


 伝令というものがあるとは思えない。己が優先の邪神界に。だが、噂として広まり、全軍へ伝わることはさけては通れないだろう。


「もう一回、こ〜れ〜!」


 軽くジャンプするように勢いをつけて、ダルレシアンが言うと、魔導師の正面にタロットカードが浮かんでいた。


「ん〜〜?」


 聖なる光を浴びるカードを、聡明な瑠璃紺色の瞳でじっと見つめていたダルレシアンは、指先で上へピンとはね上げるとようにすると、


「あ、二枚引いちゃった!」


 光るカードが、霊界の青空の下に浮かんでいるのを、崇剛は冷静な水色の瞳に映して、あごに細い指先を当てた。


「神のお導きかもしれませんよ」


 それならそれでいい。ダルレシアンは残りのカードをポケットにしまい、空中に浮かんでいるそれを見極める。


「十一番、正義と十五番、悪魔」


 正反対と言っても過言ではないカードが同時に出てしまっていた。


「ん〜〜? どう使おうかな?」


 聖なるタロットカードというアイテムは神によって授けられたが、それを活かすも殺すも、使う人間次第。

 

 いつの間にか――ダルレシアンは自身のデジタルな頭脳の中――森羅万象の草原に大の字で寝転がっていた。


 眼前に広がるは、雲ひとつない青空。甘く温かい春風に吹かれ、気分は最高潮で、立て膝をして足を組む。


 デタラメな鼻歌を歌いながら、漆黒の長い髪を空へ向けて、つうっとすくように伸ばしては、短いものから落ちてゆくのを、聡明な瑠璃紺色の瞳で何気なく見ていた。


 いつまでも平和な空気が漂うようだったが、「答え出たかも?」と、ダルレシアンは不意に上半身だけ勢いよく起き上がった――。


 それはほんの数秒のことで、タロットカードをじっと見つめていたダルレシアンを、見守っていた崇剛は異変に気づいた。それは空から落ちてくる金色をした流れ星のようなものだった。


(……直感――天啓。どなたに……!)


 なんと、理論派のはずのダルレシアンの黒髪の中へ入った。崇剛は神経質な指先で後れ毛を耳にかける。


(ダルレシアンにも、直感――天啓を受けるという傾向がある……。ですが、涼介と国立氏とは入り込む場所が違う……みたいです)


 見られているとは知らない、ダルレシアンは呪文を唱え始めた。


「ダジュリカ アジャンシー ルドルク ユラリネ カセルバ ジャスティス デビル!」


 カードが強い光は放って、あたりが真っ白になると、特に何も起きていなかった。さっきみたいに何かが出てくるわけでもなく、あたりの様子が変わることもないようだった。


 しかし、敵陣がにわかに騒がしくなった。武器同士がぶつかる音がし、掛け声が盛んに上がる。


 千里眼の持ち主は、邪神界側の軍勢の奥深くを見ていた。味方はいないはずの場所で、なぜか戦いが起きている。――いや、あれは相打ちだ。


「何をしたのですか?」

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