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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
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Time of judgement/18

 以心伝心ではないが、崇剛は似たような信念を持つ人物に出会えたことを、神に感謝しつつ、ダルレシアンの話に巻かれないように意見しようとした。


「えぇ、私もそのように思いますよ。でしたら――」


 崇剛の遊線が螺旋を描く優雅な声が戦場に響くと、


「――戻りました」


 いたことさえ忘れるほど、戦線から離脱していたクリュダが、にっこりと微笑んだまま帰還してきた。


 アドスは人懐っこそうに近寄り、


「早かったすね」

「えぇ、帰りはお得意の瞬間移動で、脱兎だっとの如くです」


 得意げに答えたクリュダだったが、ラジュの凛とした澄んだ声が、よっこらしょっと腰を上げるようにけだるく響いた。


「それを言うなら、光の如くです〜」


 クリュダは気まずそうに咳払いをして、


「こほんっ! そうとも言います」


 どこかボケている感が否めない天使を横目で見ながら、ナールはまだ止まっている敵の姿を眺めていた。


「で、ナスカの地上絵見つかったの?」

「途中であきらめて、手ぶらで帰ってきたのか?」


 見つかるはずがないと、シズキは思った。というより、先に気づかないほうがどうかしているとしか思えなかった。


 クリュダはあごに手を当てて、オレンジ色をした髪を風に揺らした。


「それが、不思議なことに、ナスカの地上絵はどちらにもなかったのですが、こちらを代わりに見つけてきました」


 男ばかりの天使五人の前に、茶色い雪だるまみたいなフォルムのものが差し出された。


 全員の視線がそれに集中したが、見せられたものがものだけに、みんな突っ込むことも忘れて、頭の中ではてなマークがパレードを始めた。


「土偶……何で、こんなものが戦場に落ちてるんだ――?」


 ひとりだけ反応を見せない男がいた。しれっと、ニコニコの笑みを見せている天使だった。


 それに気づいたシズキは、超不機嫌顔で、密かに地底深くで活動をしていたマグマが火山噴火を起こし、天へ向かってスカーンと抜けるような声で言い放った。


「ラジュ、貴様! また、女をたぶらかしたな? 貴様の仕業だとわかっている!」


 そうして、ラジュはシリアスシーンを清々《すがすが》しいくらいなぎ倒してゆくのだった。


「たぶらかしてなどいませんよ。土偶をどのように置こうか考えていたら、是非、やりたいとおっしゃってくださった女性がいたので、お願いしただけです〜」


 どんなシチュエーションだと、全員が心の中で思った。何をどうしたら、そんな場面になってしまうのか、やはりこの男の特異体質なのだろう。


 カミエは珍しくため息を深くつく。


「お前また、知らない女に頼んで……」

「世の中親切な方がいらっしゃいますね〜?」


 話を理解していないのか、それともいつもの負けたがりの罠なのかわらならいが、ラジュも相当なポジティブ思考の天使であることは間違いなかった。


 話がどうしようもおかしくなってしまっているところへ、さらに輪をかけるように、クリュダが土偶を大切そうに頬にすり寄せて、


「今夜はこちらと一緒寝ようと思いまして……。素敵な夜になりますね」


 アドスはクリュダに近寄って、右手を親しげに差し出した。


「俺っちの仏像とともに寝ると同じっすね。知らなかったっす、クリュダさんと趣味が一緒だったとは」


 意気投合――。ガッチリと握手をして、ブンブンと大きく腕を振って、友情のあかしみたいなことをしているクリュダとアドスを前にして、シズキはバカにしたように鼻で笑った。


「貴様らの性癖はどうかしているな。人以外に興奮を覚えるとは……」


 ナールの無機質な赤目が、銀の長い前髪に向けられた。


「お前、人のこと言えないじゃん?」

「潔癖症でナルシストだ」


 カミエが地鳴りのように低い声で、しっかり補足した。負けず嫌いな俺様天使は、口の端を歪めて反撃に出た。


「その言葉そのままそっくり、貴様にも返してやる。貴様の性癖もどうかしている。あのガキの見た目――」


 シズキの話が長くなりそうだったので、クリュダは強引に話し出した。崇剛とダルレシアンを交互に見ながら、羽布団みたいな柔らかな声で言ってのける。


「どうかしたんですか? 崇剛とダルレシアンが真剣な顔をしていますが……」

「意見をぶつけ合っている」


 ひねくれ言葉という戦線から離脱したカミエが言うと、クリュダはにっこり微笑み、大きくうなずいた。


「あぁ、そうですか。仲良くなったんですね」

「いいね! 何でも前向きで」


 ナールは山吹色のボブ髪を、器用さが目立つ手でかき上げた。


「前向きでないと、発掘作業はできませんからね」

「そうっすね。あと一ミリ掘れば、出てくるかもしれないの連続すっからね!」


 合いの手を入れるようなアドスの言葉が、クリュダの遺跡バカ――という火に油を注ぐ。

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