Nightmare/14
神経質な指先で、光る雪に揺れると、流れ星のような強い線を描き、飛び回って消えてゆく。
『そういう人』――感覚の人間。
こちらの言葉から、彼は理論の人間であるという可能性が出てきます。
『そういう人』――同性愛者。
彼の本当の姿であるという可能性があります。
涼介を混乱させるためならば、他の言葉でもよかったのです。
あえて、これらの言葉を選んだ理由が他にあるのかもしれません。
夢という不確かなものが、身を投げている海の水流で、形あるもの――現実だと千里眼のフィルターに引っかかる。
涼介からダルレに情報漏洩したことを考えましょう。
一.涼介は素直であるという傾向が高い。
二.涼介には警戒心がないという傾向が高い。
『ここに座って』と言われて、彼はその通りにしています。
意味の通じていない言葉は、すんなり聞き返しています。
これらから、簡単な罠でも引っかかる可能性が79.85%――
ですから、その後の会話では、意味のない質問が繰り返されているのです。
三.涼介は同性愛者ではない。
『待った!』と言って、彼はダルレを拒絶していました。
四.涼介は会話の履歴を覚えていない可能性が78.96%――
『どうして、最初にそう聞かなかったの?』と、ダルレは言いました。
こちら前の涼介の言葉は、『わかる言葉で答えろ』です。
この時、部屋の様子が変わります。
同時にふたつのことが起きました。
涼介は聞かれた質問から気をそらし、きちんと回答していません。
こちらは、ダルレが罠を二重にして、涼介を惑わせたのです。
その後、涼介は最初に疑問に思ったことを聞かないまま、話が進んでいきました。
従って、ダルレがした『気づかないの?』の答えのひとつは、罠だと気づかないの、である可能性が99.99%――
ダルレが涼介に質問をしました。
そちらに対して、涼介がどのような言動を取ったかだけで、情報は漏洩します。
質問の内容はどのようなことでもよいのです。
ダルレの目的は、涼介の情報を手に入れることなのですから。
疑問形を投げかけるたび――
ダルレの中で涼介の可能性の数値は変わり続ける。
つまり、より正確な情報が手に入ったのです。
罠は時には三重や四重に組まれています。
従って、ダルレは非常に優れた頭脳の持ち主であるかもしれません。
さらに、彼は優しさをも持ち合わせています。
ダルレの最後の言葉――
『敵だったら、どうするつもりだったの? キミはボクに殺される――かも?』
こちらは、警戒心のない涼介に注意をしているのです。
命の危険にさらされる場面に出会しても、涼介は無防備に敵に近づき、気づいた時には殺されている――。
ですから最後に、『かも?』をつけているという可能性89.97%――
私でしたら、わざわざ注意しません。
自身の責任で言動を決めるのが当然ですからね。
私から見て、ダルレは優しい人物であるということです。




