表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
650/962

Karma-因果応報-/9

「物事がうまくいかなかった時、誰かや物のせいにするために、あなたは自身で選ばず、責任を取らないで生きてきたのではありませんか? 自身で選択をすれば、己が責任を負わなくてはいけませんからね。ですが、どのような状況であろうとも、最後に決断を下したのはあなたです。断りたいのであれば、死ぬ気で断ればいいのです。従いたくないのであれば、死ぬ気で従わなければいいのです。ですから、今の状況へ陥ったのは、全てはあなたの責任なのです。違いますか?」


 茶色のロングブーツは優雅に組み替えられるが、氷柱のような視線は元からはずさないままだった。


「え、あ、あの……」


 人が死ぬかもしれない危険性がある限り、一秒でも引き延ばせない。相手が言い淀もうと、さらに新しいゲームは始まり、崇剛は元を早々とチェックメイトした。


「年齢は四十二歳――四十二年間、学ぶ機会はたくさんあったはずです。ですが、あなたは全て見ないふりをして、今まで生きてきたみたいです。何を今までしてきたのですか?」

「…………」

「年齢を重ねるほど、魂のレベルの差が大きく出てきます。何もしなかった人、努力し続けてきた人……。小さな積み重ねが大きなものに変わるのです。何か知恵をつけていかないと、ただ年老いてゆくだけです」

「…………」


 自分自身の人生の内容を問われているのに、四十年も生きてきた元は何も答えられなかった。


(言っている意味がわからない)


 ラジュは崇剛と元を見比べて思う。


 ふたりには霊層という大きな壁があります。

 崇剛は準天使に迫る五段。

 恩田 元は四百九十五段です。

 値が小さくなるほど、高くなります。

 つまり、魂が澄んでいます。


 人は同じレベル同士でしか出会うことはできません。

 崇剛の話している内容は、恩田 元には理解できません。

 できるとすれば、彼の魂の透明度はすでに上がっています。


 低い者に、高い者が合わせる必要はないんです。

 合わせるのは、低い者のほうです。

 それが神の御心です――


 邪悪なサファイアブルーの瞳の中で、崇剛は後れ毛を耳にかけた。


「百五十六人も殺したあなたは当然、死後、地獄行きとなりました」

「で、でも、生まれ変わってるから、罪は償ったんですよね?」


 理論の『り』の字も知ろうともしない犯人の悪あがきは続く。崇剛の中性的な整った顔は横へゆっくりと揺れた。


「いいえ、償ってはいませんよ。ですから、あなたに恨みを持つ者があなたを狙っているのではないのですか?」


 さっきから、ちっとも自分の思う通りに話が通じないのを我慢していたが、元はイラついて、とうとう大声で喚き散らした。


「それは、おかしいじゃないですか!」


 崇剛はどこまでも冷静で、心の水面に波紋など一切描かれない。犯人の激怒という熱の感情を、一瞬にして凍結させてしまうほどの威力のある声で言った。


「償わなくても、地獄を出る方法があるのです」

「ど、どんな方法ですか? (償わなくてもいい方法があるのか)」


 淡い期待をして、身を乗り出したは殺人犯へ、崇剛のひどく冷たい声が、舌鋒ぜっぽう鋭く現実を告げた。


「方法はただひとつです。そちらは邪神界――悪に魂を売り飛ばすことなのです。地獄には柵などがありません。ですから、邪神界の者が悪へ引きずり込もうと、地獄にいる者に声をかけ、連れ出すのです」

「えっ!? あ、悪……じ、自分が!?」


 元の顔は驚愕に染まった。


 心霊刑事の心遣いで、事実はひた隠しにされてきたが、容疑者自ら足をつ込んでしまった。


 聖霊師の冷酷な神託はまだまだ続く。


「あなたは地獄の辛さに耐えられず、悪に魂を売り飛ばし逃げ出した邪神界の者なのです」


 元が現実を受けいられる階段を、崇剛は示したが、心の内では非常に厳しい者だった。

 

 あなたが悪だと受け入られるという可能性は12.57%――


 元は顔を真っ赤にして、椅子からガバッと立ち上がった。


「う、嘘だっ!」


 国立が心配していた通りになってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ