特別ゲスト その二
陽気な音楽が鳴り出すと、女の声が流れてきた。
「みなさん、水色桔梗ラジオです。前回からすぐに見えますが、書き溜めていた小説を公開する毎日を送って、なんと前回から一年が経ちそうになっています。今日は十二月の十日です」
一呼吸置いて、颯茄は隣にいる人をチラッと見た。
「実はですね。その間に、配偶者が新しく増えました。それでは紹介です。雅威さんです」
「どうも、初めまして」
「緊張してますか?」
「そうだな。こういうことには慣れてないからな」
「馴れ初めはですね。私が燿さんに、『誰か好きな人はいないの?』と聞いたら、のんびりと『いる』と答えたので、それは是非とも家に招待しなければ、ということでご対面となったんです」
原稿をめくって、颯茄は雅威に視線を送る。
「燿さんとはどういう関係だったんでしたっけ?」
「燿とは会社の同僚だ」
「ということは、雅威さんも建築家ということですね?」
「そうだ」
颯茄は少しだけ笑う。
「家の前にはいつも報道関係の記者たちが待ち構えているので、引っ越しはみんなの瞬間移動を使って、極秘にやってしまい、雅威さんも出会ったら日からそんなにかからず、一緒に住み始めましたよね?」
「確か一週間ぐらいだったと思う」
「そうなんです。で、ここで問題がひとつ。ちょうどこの時期に、光さんのコンサートツアー真っ最中で終わるまでは結婚式は挙げられないということで、コンサートの千秋楽の翌日に式を上げました。この時が十月三日」
「あの混雑はさすがにすごかった」
「それはそうですよ。コンサートツアーの間、結婚の『け』の字も出してなかったのに、結婚式挙げちゃったわけですから、ファンならずたくさんの人が驚いたという、事務所の戦略通りになったわけです」
「そうやって決まるんだな、結婚する日取りは」
「うちは芸能人が私を含め三人いるので、申し訳ないのですが、アーティスト活動の人気取りのために色々と日付が前後することがあります」
普通とは違う明智家だった。
「どうですか? 結婚してこの家にきて」
「いいところだな。燿のそばにもいれるし、子供たちも可愛い」
「それは何よりです。燿さんは雅威さんと結婚する前までは、私のそばによくきていたのですが、結婚してからはピタリとこなくなりました。雅威さんのところに行ってるんですね?」
「そうだな。確かに俺のところにいつもいる」
「それほど、燿さんも雅威さんを好きだったということです」
音楽が小さく流れ始めた。
「それではそろそろお時間です。これからは旦那十二人でやっていきます!」
音楽が一旦大きくなり、幕切れというように小さくなっていった。




