ラスボスを倒せ!
この世界の人々の魂を食らう悪魔。やつらと対峙するは、私たち特殊能力を神に与えられた夫婦十一人である。
巧みな罠も、強靭な攻撃も何もかも掻い潜りぬけて、最終決戦を迎えた。向こうの群が遠くで横一列になって並ぶ。緊迫した時間だ。
私の能力は魂の浄化。悪に染まった心の穢れを拭い去り、神の道へと戻す役目。旦那たちの魔法には属性がついている。
蓮は風。
光命は水。
夕霧命は大地。
焉貴は変化。
月命は月。
孔明は太陽。
明引呼は雷。
貴増参は時(時間)。
独健は火。
張飛は破壊。
それぞれの特性を使って、作戦を立てて今日を迎えた。高鳴る心を沈めようと、私はみんなへ振り返った。
「準備はいいですか?」
「いい」
「じゃあ、決戦です!」
いざ、勝負が始まった。あっという間に大混乱となる戦場。陣地に残っているのは、治癒担当の月命。時間を自由に操れる貴増参。そして、変化というフリーダムな魔法を使える焉貴は、大鎌を肩にかけたまま、指をパチンパチンと鳴らし、何かの魔法を発動していた。
その度に、敵軍でおかしな動きが起きるようになった。最初は、
「きゃあああっ!」
という女性の悲鳴だった。それが何度か起きると、次は、
「うへへへへっ!」
「お前も好きだな」
「お前だってそうだろう」
敵軍の男たちがデレデレの顔をし始めた。私はおかしいと思い、一旦全員を呼び戻した。
敵の陣地で間近に見ていた蓮が焉貴に聞いた。
「何をした?」
「敵の武器と俺のモン入れ替えたの」
それにしては、少々反応がおかしい。
「何を入れ替えたんですか?」
妻が聞くと、焉貴は白状し始めた。
「電マ、バイブ、ローター、エロ本……?」
夫たちの何人かがあきれたため息をついた。
「お前のポケットは色情魔か……」
しかし、スーパーエロ一号――光命は右手を上げて言った。
「それでは、電マを私にもください」
戦っている最中だというのにと、夫たちがさらにあきれると、負けたがり屋の月命が凛とした澄んだ声で言った。
「それでは、そちらで僕を攻めてください。負ける可能性が高くなりますからね」
妻は大慌てて止めに入った。
「いやいや、命かかってます! 真面目に戦ってください」
明智軍は真剣勝負の時に笑いを取れるほど、柔軟な軍であった。




