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明智さんちの旦那さんたちR  作者: 明智 颯茄
最後の恋は神さまとでした
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おまけの打ち上げ/3

 颯茄はナプキンの端を爪でひっかく。


「ちょっとそこは変えてみました。孔明さん、冷静だからね。どんな感情にも流されないところがあるから、それだと話面白くなくなってしまうので」


 戸惑ったりしないのだ、大先生は。起きた物事を、冷静で精巧な頭脳で推し量って言動を決めてゆくだけなのだ。


 あっという間にステーキを平らげてしまった孔明は、おかわりの肉を独健によそってもらっていた。


「だとしたら、これでよかったんじゃないかな?」

「やったあ! 合格点もらった」


 颯茄は喜んだ。合格点なんてもらったことがなかったからだ。認められたのだ、帝国一の大先生に。彼女は気分がよくなって鼻歌を歌うように先へ進む。


「よし、じゃあ、次の人。張飛さん」

「俺っちは遠くの宇宙にいたっすからね。本当、これくらい、みんなとは接点なかったっす」


 ステーキ一枚では足りずに、二枚一気に食べている張飛はにっこり微笑んだ。負けていられないなと思った颯茄は、肉をバクバクと食べる。


「出番少なかった?」

「いや、これくらいなんじゃないっすか? みんなの視点からすれば」

「職業が先生になるまで大変だった話を掘り下げると、これまた長くなってしまうので、それはまた別の機会に書くかもしれないです」

「そこまで面白い話じゃないっすよ。俺っちの見通しの甘さが出てるだけっすから」


 妻はカラになった皿を、独健にわかるように持ち上げた。


「じゃあ、先生になってからのことを書こう。あの紙飛行機の話とかね」


 この話は明智家では有名なもので、旦那たちから笑いの声が巻き起こった。


「あははははっ……!」

「もう、プンプン!」


 孔明は持っていたナイフとフォークのえの先で、テーブルをどんと叩いた。颯茄は真顔に戻る。


「孔明さんの怒りが再燃しそうだから、次へ行こう。え〜っと、焉貴さん」

「はいよ」


 野菜から先に食べてしまった焉貴は、肉を適当に切っては口へ運んだり、皿の端からテーブルに落としたりをしている。


「弟や妹たちをグルグル回して、地面にどんどん墜落してましたけど、あんな遊びしたことありますか?」

「あるよ」

「あるんだ! すごいなあ。」


 浮遊の能力があると、世界は変わるものだと、颯茄は感心した。遊び方まで変わってしまう。しかし、焉貴の声色はどこまでも無機質だった。


「でも、叱られたね。物壊したからね」


 何でもありではなかったようだ。颯茄はお代わりのステーキをじっと見つめながら、ナイフとフォークをそっと取り上げた。


「まあ、すぐ元に戻りますけど、やっぱり物壊すのは、両親からすると叱りの対象になるんだろうなあ」

うちで、子供がやったらどうすんの?」


 総勢二百名を超えている子供たち。彼らのパワーはすごいものだ。颯茄は少し考える仕草をして、


「ん〜〜? 壊れてもいいものならいいですよ」


 誰かが作った大切な宝物とかでなければ、子供は伸び伸びと育って欲しいものだ。


「甘いなあ。子供に甘い」


 何人かの旦那から意見があがったが、颯茄はしっかりと意見した。


「いいんですよ。私は枕投げ賛成派なので」


 絶対にダメという旦那もいる。明智本家では、許されない行為。だが、娘は考え方が違うのだ。子供は遊びたいのだから、家でぐらいはいいと思うのだ。他の家に行った時にはやらないようにと注意をしておくのだ。


 話しっぱなしの颯茄は、ワイングラスに入った水を飲んで喉を潤した。


「次は独健さん」

「そうだ。よく覚えてるな」

「いや、なんとなくで、今手元で台本を急いでめくってました」


 彼女は膝に乗せていた台本を落としそうになった。独健はテーブルに頬杖をつく。


「俺はそうだな。本当に、結婚する気がなかったから、こんなもんじゃないのか」

「でも、よく結婚しようと思いましたね。貴増参さんの罠とはいえ、結婚ですよ」

「俺よりも、まわりがよく俺のことを見ててくれたからじゃないか。結婚できて、今はよかったと思ってる」


 レストランみたいな夕食を前にして、颯茄は独健に丁寧に頭を下げた。


「料理上手なところは、我が家では重宝しています」

「お前はあんまりしないからな」

「上手に作れて、好きな人がやった方がいいんですよ。こういうことは」

「確かにそうだ」

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